ぷっくら腹が膨らんだイワシを手に入れた。
ぷっくらにも魅力を感じるが、その新鮮さにも惹かれた。
ここはひとつ、生でいただくしかないだろう。
シーコ、シーコ・・
包丁を研ぐ。
魚の捌きは、包丁の切れ具合で決まる。
特に、刺身包丁は丁寧に研ぐ。
冷蔵庫から、イワシをとりだす。
まずは、包丁の背で、こしこしウロコを取る。
腹を切開し、ワタを抜く。
ここで初めて、水道にあて、きれいに洗い流す。
真夏は、水道水が生暖かいので、
できるだけ短い時間しか水を使わない。
水からあげると、紙で水分を拭く。
さて、三枚におろそう。
サッサッサッ
皮も剥ぎ、短冊ができあがる。
ここでいったんラップして、その身を
冷蔵庫に入れる。
冷たくして引き締めるのである。
イワシや、サンマは身が柔らかい。
短時間なら、
冷凍庫に入れてもよい。
風呂を浴びたあと、再び、
冷蔵庫から取り出し、
刺身をひく。
皿は、あらかじめ
冷凍庫で凍らせておいたモノだ。
同時に、ナメロウも造る。
ネギ、白みそ、ニンニク、日本酒と合わす。
できた!
あわてて食卓に運び、ビールと日本酒をセットする。
ひとつつまんで、わさび醤油にひたし、
舌の上にのっける。
思わず舌鼓をうつ。
「舌鼓をうつ」と、文章で書くと、雰囲気が出るものだが、
実際に、食卓で舌鼓をうつと、じつにみっともない。
チャッ・・だの、タンッ・・だの、
いくら肴が旨くったって、
いちいち音を立てるのはいただけない。
『モノを食べる時に、音を立てるな』
子供の頃の教えだ。
大きな音を立てるのは、落語だけにしてもらいたい。
ただし、たった一人しかいない場合には、ぜひ、うってみよう。
今日は、家族もいないし、一人だ。
よし、
わざと、舌鼓を打とう!
イワシの刺身が口中で踊るたびに、
チャッっとやる。
盃で酒をふくむたびに、チッとやる。
ナメロウをナメルたびに、タンッと舌を打ち鳴らす。
のってきたところで、扇子をとりだし、
時折、食卓を叩く。
「あぁ~うまい」
タタンタン。
調子をとる。
「♪~いわ~しぃ~なめぇたかぁ~♪」
唄ったこともないのに、ドドイツもどきをやってみる。
やっちゃいけないと云う悪さを、時折やってみるのも、
楽しい。
ただし、イワシ食べるレベルで・・