<食べる>とは何だろう?
見る、嗅ぐ、触る、口に入れる、咀嚼する、
飲み込む、胃袋に落とす。
普通に考えれば、こういう行為の総称を<食べる>と表現している。
ほんとにそうだろうか?
ここに、ライオン君を登場させよう。
ライオン君は、腹が減ると、原野に動き出す。
「さてと、どいつを襲おうかな?」
想像力を働かせ始める。
「おぅ、あの縞々模様のヤツを、仕留めてだナ、
腹に食いついてだナ、血をグビグビ浴びてだナ」
仲間に目配せをしながら近づいてゆく。
「おぅ、うまそうだナ、食いつく時までは、
めいっぱい腹を空かしておこうかナ。
どこから食おうかナ・・」
よだれ垂らしながら、平原を匍匐前進してゆく。
「食いついた刹那、咆哮をあげたいよナ、
あ~~うんまいなぁ~チャブチャブ」
舌なめずりしている。
っと、ここで、現場を昨日の私の活き魚料理屋にとばしてみよう。
「さてと、魚、何にしようかナ?」
おっ、あの縞々模様のシマ鯛いんじゃない。
血抜きした刺身を腹ペコ状態で、食らいつこうかナ。
食った瞬間は、小さくとも、ア~~とか言いたいよナ。
あ~ペロペロ」
さあ、どうだろう?
私とライオンくんの共通点は何だろうか?
すべては、食べる前の準備段階にある。
食べるという行為を想像する段階にある。
食べるとは、食べている時には、もう終わっているのかもしれない。
食べる前に、食べる事を想像している時間に、ゾクゾクし、
わたしをかきたて、
わたしの唾液を噴出させているのではないだろうか?
「昼飯どうしようか?角の店のカツ丼が第一候補だが、
一応ダイエットもかんがみ、隣の蕎麦屋にしようかな?
せっかくだから、天ぷらも付けてみようかナ?
野菜天なんかいんじゃない?
あの店のマイタケの天ぷらの旨いこと!
シャクシャクと噛みごたえがあり、甘辛い汁が滲みて・・
蕎麦すする時は、思いっきり、ズルズルと音を立てたいナ」
食べる前の想像している時間の方が圧倒的に長い。
ネッほら、ライオンくんとどう違うの?