ギャア~~~!
「痛いイタイイタイ、噛んでる!」
私が、遊漁船の中で大騒ぎをしている。
そこは、千葉県大原の沖合いだ。
ショウサイフグを釣らせる漁船に乗っている。
ショウサイフグとは、釣って面白く、食べて美味しいフグだ。
毒はある。
あるが、フグの調理免許を持っている方が、
すべて処理してくれるので、
安心して持ち帰るシステムになっている。
この釣りは、ユニークだ。
エサのアオヤギを針に付けて水中にぶら下げるのだが、
実は、エサはブラフであり、
そこに寄ってきたフグを、その下にぶら下げた、
カットウという針の山で引っ掛けるのである。
ゆえに、簡単な釣りではない。
積極的に引っ掛けにいかなければ、一匹も釣れない。
<セッカチな人間に向いている>
<落ち着きのない人間に向いている>
つまり私だ。
「おぉ~釣れたぁ~!」
喜びいさみ、フグを手に取った。
その瞬間だった。
ガブリッ!
フグが私の小指に噛み付いた。
「痛い、イタイイタイ!」
フグの歯は鋭い。
そのアゴは、異常に強い。
魚体として20センチに満たない魚が、
テグスはおろか、針まで噛み切ってしまう。
縫い針を想像してもらおう。
あの縫い針を小さな魚が噛み切るのですゾ!
フグの歯が私の小指に食い込んだ。
「♪~アナタが~噛んだ小指がぁいたいぃ~♪」
その昔、歌われたものだが、
フグのことをアナタとは言いたくない。
なんとか引き離したものの、歯型がくっきりと残り、
身がえぐれ、血が噴き出した。
一日たって、なんとか痛みは止まったものの、
「♪~きのうの夜のぉ、小指ぃがい~たぁい~♪」