《ヤドカリ》が嫌いだ。
どのくらい嫌いかと問われれば、ものすごく嫌いだ。
生き物の中で、2番目に嫌いだ。
「じゃ、1番は何?」
その問いに答えたくない。
答えたくないから、2番目を答えている。
《ヤドカリ》
ヤツは、借りた貝の中から、手を伸ばす。
その動きが、気持ち悪い。
手を伸ばすと言ったが、たぶん手だ。
足ではないと思う。
なんせ、動きが速い。
手としか思えない俊敏な、いやらしい動きをする。
手で、地面をかき、前進する。
こうやって書いているだけで、おぞけが振るう。
さらに驚く事に、ヤツらは、貝以外のモノにも体を潜り込ませる。
瓶のふた
キャップ
缶詰
コップ
へこんでさえいれば、そこを家にする。
移動部屋にして、運び続ける。
さあ、ここで、与論島のタクジ君チが登場する。
タクジ君チには、3人の子供がいる。
長男は、やはりヤドカリが嫌いだ。
もの凄く嫌いだ。
だからか・・・
あるとき、お父うに叱られた時の事だった。
長男は、声を絞るように涙ながらに、お父うに反抗した。
「うぅ~お父うの所に、ヤドカリが行けばいいんだぁ~!」
子供から、この発言が出るという事は、
お父うことタクジ君が、いかにヤドカリに怯えているのかの、
分かりやすい証言といえる。
タクジ家は、家族的に、ヤドカリが嫌いになっている。
その昔、イシマル家も同なじだった。
一家で、ヤドカリが嫌いだった。
特に、男たちが、怯えていた。
おそらく・・人類的な傾向だろうと、憶測している。
いや、あえて断言してみよう。
《人類の中で、男性はヤドカリが嫌い》