砥部焼(とべやき)が好きである。
器の重厚感がいい。
ふちが厚く、滅多なことでは、割れない。
カケない。
なにより、フチが末広がりにならず、包まれている感覚が嬉しい。
愛媛県の松山市のすぐ近くに、砥部はある。
町の中を貫く大通りのセンターラインにも砥部焼が並べられている。
窯元の直売所もある。
体験器造りにも挑戦できる。
こねてある土を、どうとかして形にし、置いておけば、
後日、出来上がったモノを郵送してくれる。
そういえば、30年ほど前、
さる先輩のお宅におよばれした時のこと・・
奥様が、大きな器にさつま揚げのようなモノを載せて、
我々のテーブルに持ってこられた。
「これ、トベヤキですの、熱いうちにおあがり下さい」
これを聞いたイシマル、
『ははあ~愛媛のトベヤキですネ、アレは旨いですよねぇ~』
「・・・・・・」
知ったかぶりである。
ヤキと言えば、食い物だと、知ったふりをしている。
『いやぁ~トベヤキはほんとに旨い旨い』
よしゃあいいのに、まだ褒めちぎっている。
帰りに、奥様から、砥部焼のお土産をいただいた。
「どうぞ、お持ち帰りください」
『器をですか?』
「ええ、トベヤキおいしかったでしょ」
真相を知らされ、真っ赤になった覚えがある。
いただいた器がツボだったら、入ってしまいたかった。
その砥部焼は、いまだに、我が家で使われている。
つまり、割れない、カケない。
さて、私が拵えた砥部焼の皿は、どんな風になるのだろうか?
3か月後が楽しみである。
その日は、鯖を釣っておこう。