「サバがいねんだヨ」
八戸の魚市場のおやっさんが嘆いている。
八戸沖のサバと云えば、《銀鯖》ではないか!
日本一脂ののったサバと云われている。
確かに、秋から冬にかけての銀サバの旨味は、
腰が抜けるとまで言われている。
言われているものの、その時期に来たことがなかった。
その八戸で、
ほとんどサバがいないのだと、こうべを垂れている。
私も、うなだれるしかなかった。
八戸の街中に出てみた。
サバ専門店を見つけた。
もちろんノレンをくぐる。
サバ刺し身を頼んだ。
出てきたのは、冷凍されたものが解凍されていた。
う~~む、
これは、しょうがないのだ。
なにせ、漁港にも挙がってないものは、どこにもない。
苦肉の策で、解凍サバを、お出ししている。
店側としても、涙が出そうなくらい、不漁は悔しい。
サバを売りにしているのに、そのサバが獲れない。
客に出せない。
だからといって店をたたむ訳にもいかない。
サバが獲れる日を、ただただ待っている。
「おっ、アレは何だろう?」
カウンターの上に、酒瓶が飾ってある。
《酔鯖》 すいしょう
日本酒の名前だ。
鯖の漢字の音読みは、<しょう>だったのか!
「
一杯ください」
トクトクトク~
一合升の中にグラスを入れ、こぼし酒をついでくれる。
「もっと
いっぱい下さい」
サバがいない代わりに、酔わせてくれたのは、
やはりサバだった。