「あのさァ、川の上流だからこの水飲めるよね」
『かもネェ~』
「来年こそ与論島、行けるよネ」
『かもネェ~』
相手の問いに、なんでも『かもネェ~』で応える人がいる。
応えられた方も、答えて貰ったような気がして、
もう一度尋ねることはしない。
よく考えれば、イエスなのかノーなのか定かでない。
どちらかと言えば、ノーに近いと思えるのだが、
返事はして貰ったので、まあいっか・・となる。
この《
かもネェ~オジサン》の特徴は、
相手の話を、半分以上聞いていない点だ。
試しに、
「消費税あがったらどうする?」
『かもネェ~』
「自転車買っちゃったよ」
『かもネェ~』
たしかに聞いていない。
ところが、その流れの中で、
「宝くじ当たった」
『うっそ、いくら?!』
ちゃんと聞いている。
聞こえる事と聞こえない事を、
自動的に振り分ける装置をそなえているとみえる。
今回に限ってこのオジサンの正体は、私ではない。
こっそり教えよう。
ナカヒラくんである。
自分でボーイソプラノと言ってはばからないナカヒラくんである。
その甲高い声で、『かもネェ~』を連発する。
だから時折からかってやる。
「今夜は鍋だゾ、中身はネギと何?」
『
かもネェ~』
鯖ソーセージ・・・かもネェ~