子供の頃、こんな遊びをやっていた。
《チッカケ》
ボールを人にぶつけるゲームである。
チッカケるとは、大分弁で、ぶつけるという意味。
「ボール、チッカケたな!」
ボールをぶつけられて怒っている。
さて、この遊び・・
ボールはなんでもいいのだが、
なにせ、ボール自体が少なかった時代、
近場にあるのは、テニスの軟球ぐらいだった。
当たってもたいして痛くないし、ちょうどよかった。
フィールドはどこでもいい。
広場でも、運動場でも、山の中でもいい。
道路ですら構わなかった。
車がほとんど走っていない田舎の道である。
ゲームのスタートが面白い。
誰かが、家の屋根にボールを投げる。
瓦屋根をコロコロと落ちてくるボールを奪い合う。
最初に掴んだ奴は、賞賛される。
っと、そこからゲーム開始だ。
誰でもいいからボールをチッカケる。
敵味方はない。
チッカケられた奴が鬼となる。
鬼は、ふたたび誰かを狙う。
当たろうが、当たるまいが、投げられたボールはイーブンとなる。
チッカケられたくないので、必死に逃げまどう。
ドッジボールと違って、コートなどない。
どこまでも逃げてゆく。
人んチの庭だろうが、家の中だろうが、どんどん逃げてゆく。
畑を走り回り、トマトをつぶして、どなられる。
逃げているのに、犬に食いつかれる奴もいる。
痛くないと言ったが、実は痛いともいえる。
我らは皆、半ズボン半袖。
裸の部分にテニスの軟球が当たる。
バチ~ン
やはり痛い。
頭も痛い。
顔面にチッカケられた日には、火が出る。
それでも誰も怪我しないので、チッカケは延々続く。
しかし、そのボールはいつか割れる。
割れると、中に藁を積め込み、硬くしてチッカケる。
こうなると、痛い。
この辺りで、遊びは終わりに向かう。
つまり、皆、三々五々いつの間にか、
いなくなるのであった。