薬を全部のんだ。
薬とは、私に処方された風邪薬である。
一週間分が、こんもりと渡された。
「どうせ、二日しか飲まないだろう」
安易に構えていた。
ところが、今年の風邪は、年季が入っていた。
3日たち4日たち、まったく良くなる気配がなかった。
私の薬の飲み方は、超のつく真面目である。
一粒と言われれば、一粒飲む。
二粒もしかり。
食後服用もきっちり守る。
しかして・・・一週間が過ぎた。
薬袋の最後の最後に、少なくなった錠剤らがテーブルに並んだ。
アレッ・・数が合わない。
きちんと数合わせをしていた筈なのに、
錠剤が2粒残った。
なんだコレは?
《薬の数が合わない》
この現象は、よくある事だと、皆が言う。
「オレもあった」
「わたしも頻繁にやるワ」
最後まで飲みきった経験のない私にとって、
初めての経験であり、驚きだった。
どこかで、飲み間違い、飲み忘れをしているのである。
このセイで風邪が治らないのか?
治らないから、この現象が起こるのか?
ひょっとすると、ピッタリで飲みきったとしても、
どこかで、飲み間違いを何度もやり、
結果、帳尻が合い、ピタリとなったのかもしれない。
その昔、ドリフのコントで、
長さんが、「回れ右、右向け~右・・・」と命ずる。
他の4人は、デタラメな方向を向いてゆく。
しかし、最後の号令がかかると、なぜか皆ピタリと合っている。
テーブルの上に残った薬の粒を眺めながら、
懐かしいコントを思い出していた。