オヤジ、
米寿(88歳)の時のこと。
自動車の中から出られなくなった。
運転席のドアが開けられない。
力がないのではなく、
開ける方法がわからない。
恐らく、チャイルドロックを誤って押したのだろう。
小さなパニックを起こしている。
外から、ガチャリと開けてあげると、
這い出してくるなり、ボンネットに両手を突いて、
『
オレも、つまらん男になったなあ。』
オヤジのオヤジ、つまり、
じい様が
米寿の時のこと。
こっそり、競輪場に行った。
(こっそり行くこともないと思うのだが)
それも、自転車で行った。往復5キロ。
大分県の別府競輪。坂ばかりの町なのに、
自転車とはえらい!
ところが、帰りに、出口のところで、
孫とバッタリ出会った。
その途端、
『ここは、どこじゃろ?ワシは何しとるんじゃろ?』
いわゆる痴呆、徘徊老人を
ヘタクソに演じ始めた。
車券をにぎりしめながら・・
おかげで
その話が親戚中に知れ渡り、大笑いとなってしまった。
じい様! そこはひとつ、あなたの
息子を見習って、堂々と
言い放てば良かったのだ。
『
ワシも、つまらん男になったなあ。』
落語を語る米寿祝いの じい様