ピョンチャンのフィギュアスケートで、
不思議なジャンプをする選手がいる。
《金博洋》
中国の選手だ。
何が不思議かと云うと、
ジャンプの時に、顔を空に向けて回っている。
ここで、回転するワザを、ダンスと比較してみよう。
ダンスやバレーでは、回転する時、正面に顔をすえおき、
身体がいくら回っても、一点を見つめたまま、動かさない。
身体が一回転を終わる瞬間に、
顔をクルリと遅らせて廻す。
3回転すれば、遅れた顔が3回まわってくる。
ところが、フィギュアスケートでは、廻り方が違う。
ジャンプや、回転の際、
進行方向に顔を傾けて、廻る。
顔を遅らせたりしない。
原因は、スピードがあまりにも速く、
ダンス仕様では、頭の回転がついていかないからだ。
さあ、そんな折だったピョンチャンの会場。
金選手のジャンプの回転を見た。
顔を45度上方に向けて、グルグル廻っている。
信じられない。
回転には、軸というものが大切で、
軸の感覚をつかさどる目や脳みそが所属している、
頭を傾けるなど、考えられない行いだ。
アナタに試していただきたい。
部屋の中をゆっくり身体を回しながら、歩いてみてほしい。
できたなら次に、少し上に頭を傾けて回ってほしい。
非常に難しいのが分かって貰えるハズだ。
危ないので、一回で試技はやめましょう。
おそらく金さんは、その昔、
ジャンプで高く跳びだす為に、グッと力をこめたら、
頭がのけぞってしまったのではないか?
それがクセになって、今に至ったのではないか。
だのに、軸はブレない特殊な経験を積み重ねたのである。
もし今、皆と同じように、頭を真っすぐにしたならば、
あれほど見事な回転はできないに違いない。
この想像が当たっていると思うには根拠がある。
彼がジャンプせずに、単なるスピンをする時、
顔は傾けていない。
つまり、上方に力をこめる時だけ、傾いているのである。
ある意味、とんでもない能力の持ち主だ。
ソラマメとは、空に向かって、頭をもたげている。
彼に、ソラマメの力強さを感じた。
私の中では、彼は、《ソラマメ君》と呼ばれている。
惜しくも4位だったが、気になる選手ソラマメ君である。