ヘリコプターで初めて飛んだ。
今、「ヘリコプターに初めて乗った」
と書こうとして、急きょ変えた。
「乗った」のでは、
空に浮かばなくとも「乗車した」と言えるかもしれない。
空に浮かんで初めて、飛んだと言える。
これまで、飛ぶ機会がなかったワケではない。
しかし、その度に、なんらかの理由で、
私が乗らない風に変更されていた。
ヘリに嫌われているのか、乗ると危険が迫ろうとしているのか、
定かではないが、もう生涯乗ることはないだろうと、
諦めていた。
飛行機に乗った回数はかなり多い。
同じ空を飛ぶマシンのヘリ飛びが、ゼロというのは、
いかにもバランスが崩れていた。
ゴォ~~~バリバリバリバリ!
10mと離れていない目の前で、ヘリのローターが回りだす。
長~いナイフのような金属のローターが3枚、
恐ろしいほどの速さで、回転する。
飛行機のプロペラも、近くで見ると、怖い存在だが、
ヘリの恐怖は、その比ではない。
文明というものを信じていなければ、
とても近くに、すまし顔で立っていられない。
幸い、マシンに対する信頼を、
多少なりとも持ち合わせているとあって、
バタバタとはためくズボンの下の両足は、
しっかりと地面を掴んでいた。
いざ、乗車!
頭髪が真横に引きちぎられそうになるのを押さえながら、
ドアにかけこむ。
前席に、パイロットがひとり。
後席は4人乗り。
そこに3人で座る。
私は、右端に陣取った。
大声で叫べば、聞こえないことはないくらいの騒音。
持ち込んだ、デジタルカメラを映像モードにする。
轟音が一段階すさまじさを増す・・その瞬間。
ふわぁつ
身体が浮いた・・いや、浮いたのはヘリだ。
っと、すぐに重力Gがかかり、急激に上昇してゆく。
みるみるとはこの事で、今いた地面が小さくなってゆく。
あっと云う間に、高度100mほどになる。
空と地球の堺の地平線だらけの風景がひろがる。
やには、ヘリが機体を傾ける。
グイィィ~~~ン
「おいおい、そんなに傾けるのかい?」
旅客機のバンク角度をはるかに超えている。
茶色の田んぼや畑が、グルグル回りはじめる。
「よしよし、こうでなくっちゃ!」
ここで気付いた!
《
飛行機は、常に落ちまいとして、前へ前へ抗っている》
プールに例えると、溺れかかっている。
それに対し、
《
ヘリは、溺れることなく、自らの意志で、浮かんでいる》