カメラを私の足元に向けている。
右と左の靴が異なっている。
右が、山の中を走り回る仕様の靴。
左が、ちょいとお洒落な革靴。
車でロケに行った帰り、革靴で運転するのは、
皮靴の先っちょが擦れて剥げるので、
右足だけ、吐き替えた。
オートマの車の場合、右足しか使わない。
そこまではよかった。
その後、私は、某有名デパートに買い物に行ったのである。
紳士服コーナー。
夏用のジャケットを探していた。
「いらっしゃいませ、どうぞお手にとって」
こぎれいな店員さんが、私の周りによってくる。
「サイズは他にもございます」
店から店に足をうつし、上着だけ何着か試着する。
『あれっ、肩がナデ肩っぽいナア~』
『袖が長すぎるゾ』
ああだこうだと、不似合な部分を見つけ、買い渋る。
しばらくのデパ内うろつきの後、
シャツを2枚買い求めた。
で・・・駐車場に戻った・・
その時!
私は、自らの足元を見た。
ガ~~~~~~ン!
チグハグな靴。
ってぇことは、さっき、したり顔で店内を闊歩してた時、
当然、店員さんたちは、この足元を目にした事になる。
ファッション専門の店員さんは、
まずはお客の全身を眺める習慣があると聞いた。
試着中、なで肩を指摘した折りには、
しっかりと、私の足を見たハズだ。
首を振って、
二度見したかもしれない。
彼らは、どう思ったのだろうか?
(まさかファッションじゃないよネ)
(同じ靴を色違いで買って、左右入れ替えて履く人はいるけど)
(革靴と運動靴履いて、気持ち悪くないのかしら)
(徘徊には見えないんだけど・・)
(一応、店長には知らせておこうかしら)
知らぬが仏という言葉がある。
知ってしまった私は、「ガ~~~~~ン」とかいう言葉で、
自分を誤魔化そうとしている。
無かったことにしようとしている。
自分の過去歴から消そうとしている。
見られた事実を、忘れようとしている。
しかし、この恥ずかしい行為を、
近い将来、私は、否が応でも思い出す事になる。
買い求めたシャツを着て出かけた時に・・・