「ソレ、なにですか?」
そこは大山(だいせん)の山の中だった。
長細い筒のようなモノを抱えた人物と行き会った。
「見せて貰えますか?」
彼が大事に抱えたソレには、文様が描かれていた。
長さ 1m20cmほど、
太さ 7センチほど
重さ 1,5キロくらい・・
筒の中は、空洞となっており、
上と下の穴のほかに、穴はない。
『コレはですね、楽器です』
「楽器?」
『
イオンカと言います』
「イオンカ?」
すると、上の穴に口を付け、ふいてくれた。
ビヨ~ンビヨ~ン
「それって、オーストラリアのデデリデューみたいだ!」
興奮する私に、彼が解説してくれた。
なんでも・・・
イオンカは、北海道のアイヌの伝統楽器だそうで、
「地響きのするような音のする笛」とも呼ばれ、
オーストラリアの原住民の語りでは、
「その昔、日本からカヌーでやってきた人々が、
歌い踊り儀礼を共にし、又、旅立って行った」
素材は、
ウドです。
それに漆を塗り、アイヌの文様が描かれてます。
だそうだ。
「ボクにも吹かせてください」
ビヨ~ンビヨ~ン
なぜか、昔から持っているデデリデューの吹き方をマネながら、
音を奏でた。
鳥取県の大山の山中に、微妙な音色が轟いた。
鳥たちは、いっさい反応しなかった。
感謝の意を伝え、彼とはそこで別れた。
梢に頭をぶつけそうなほど、背が高かった。
いずれどこかで・・
私のデデリデューとデュエットしてみたいものだ。
ん・・?
さっき、素材はウドって言わなかったか?
ウドの大木のウドかい?
ウドって、あんな木になるのかい?