『ねえねえ、橋渡ったとこに、
美味しいパン屋さんが出来たの知ってる?』
<
美味しいパン屋さん>
このフレーズは、よく聞かれる。
パン屋さんの大半は、こう呼ばれている。
新しいパン屋が出来ると、まず間違いなくこう呼ぶ。
<美味しいパン屋さん>
なぜなんだろう?
なぜ、ただの<パン屋さん>じゃないんだろう?
<美味しい>を接頭語に付けるのだろう?
(何が、不思議なの?)と思ったあなたに問う。
では、<美味しい魚屋さん>と言いますか?
<美味しい八百屋さん>
<美味しいお菓子やさん>と言いますか?
『美味しいラーメン屋さん、と言うじゃないの!』
確かに言います。でもそれは、食べてみて美味しくて
初めて、そう言ったわけです。
出来たばかりの店を、美味しいとは言いません。
<美味しいうどん屋>しかり。
<美味しいケーキ屋>しかり。
なぜか、パン屋さんだけは、
無条件で、美味しいと言われる。
新装オープンすると、もう、
美味しいとレッテルを這って貰える。
パン屋さんって、ズルイ!
と、思うのだが、やはり、ふと気付くと
<美味しいパン屋>と呼んでしまう。
考えに考えた末の結論だが、
パンは、
焼きたてだと、たいがい美味しいもんなんだな。
少々、不出来でも、焼きたては美味いんだな。
それに加え、あの
香りだな。
あの香りは卑怯だな。
ご飯には、あれほどの香りのインパクトは無いもんね。
結論
『角の、美味しいパン屋さんで買ってきたのよ。』
と、敢えて
言われずに、冷えたパンを食べたとしたら、
まあ、ただの普通のパンだわな。
総論
パン屋さんとは、もれなく、美味しいと言って貰える特権階級かもしれない。
『ねえねえ、駅前に、美味しいパン屋さんが出来たんだって』
「あらそう、美味しかった?」
『あ、いえ、まだ食べてないんだけど・・』