新潟県の沖合いに、小さな島がある。
<粟島>(
あわしま) という。
村上市から、船で、一時間かかる。
周囲20キロあまりのこじんまりした島だ。
標高もたいした高さはない。
レンタル自転車の、ママチャリでも、一周出来る。
産業は、ほとんどが漁業。それと夏場の観光。
だから、
漁師の家が、夏の間だけ、
民宿をやっている。
そこにお世話になった。
ふらっと行って泊めて貰った割りに、新鮮な魚がふんだんに
食卓に登場した。
「朝、漁に行って来ただ。」
『ほんじゃ、明日朝、連れて行って下さい!』
「んだ」
ドッドッドッド
まだ明けやらぬ、暗闇の中、漁船が走る。
漁場に着くと、昨夜入れておいた網をクレーンで引き上げる。
ほほう、これはすごい。
刺し網に大量の魚がかかっている。
石鯛が多い。あいなめも多い。食べたい。
ところで、この島の名物料理に
<
わっぱ汁> というのがある。
冷えた味噌汁の中に、魚を丸まま放り込み、そこにガンガンに
熱した石を落とすのだ。
バジュバジュウ~!
このわっぱ汁は旨い。魚が新鮮なのも手伝って、
最後の一滴まで、味わってしまう。
そうそう、この粟島の最高地点に、展望台がある。
展望台に上ってみると、そこにつき物の、展望地図が書いてある。
地球をクルリと丸めた様な絵で、海の向こうの新潟や山形の
山々が描かれてある。
その連山の上に、大きな文字で、こう書いてあった。
<
日 本 国 >
ふ~ん、そうすると、ここは、どこなんだろう?
『ねえねえ、おやじさん、ここはどこなの?』
「んだ、あわしま」