<
カジノのディーラー>
現在日本ではカジノは違法である。
30年前も違法である。 ところが、カジノそっくりの遊び場が
お金を賭けさせないで営業していたのだ。
そんな事が在り得るかと思うでしょ。
しかし、実際に有り得たのだ。
お客達は、ラスベガスに行く練習気分だったのかもしれない。
両替したチップがたとえ増えても換金出来ない。
その店で、使い切るしかないのだ。
だのに、連日大賑わいだった。
店は大もうけしていた。
そこの、
ディーラーのアルバイトをやっていたのだ。
ディーラーとはなんぞや?
ディーラーとは、ルーレットの玉を回している人の事だ。
ブラックジャックのトランプを配っている人の事だ。
『え~そんなの誰でも出来るんですか?』
いいえ、誰でも出来ません。訓練がいります。
しかしながら、指先が器用なイシマル君は一週間で抜擢された。
すぐに、チョッキに蝶ネクタイを着せられた。
「プレイス ユア ベット」 (賭けて下さい)
ルーレットに玉を投げ入れる。 ・・コレが難しい。
客がチップを置いていく。
「ノー モア ベット」 (おしまいです)
カランコロ・・
「25 赤 奇数」
さあ、ここからがディーラーの腕の見せ所!
ギャンブル映画では、ここでT字型の棒で外れたチップを
かき集めるのだが、イシマルは違った方法を試みた。
それぞれの客のチップ別に集め積み上げるのである。
高さは必ず
20個づつ。
それも猛スピードで。
見ている客はそのあまりのスピードと正確さに唖然とするのだ。
芸を見せていると言ってもいい。
しかも、(ここが肝心の所だが)
当たっているチップの計算をしながらなのだ。
例えば、こういう例を見てみよう。
Aさんは
36倍に7枚、8倍に2枚、4倍に13枚チップが当たっている。
この計算を
瞬時にするのだ。瞬時とはどれくらいか?というと
3秒位なのだ。
はい!ボケっと見てないで、ここはわざと驚く所ですよ!
『え~イシマルさんて天才なの!!!』
更に驚く事に、当たっている客は他に何人もいるのだ。
その計算もやはり、瞬時に行うのだ。
この瞬時も、やはり3秒位なのだ。
はい!白々しく驚いてね。
つまり、「25」という数字が出てから、
10数秒間で、すべてのチップを回収し積み上げ
かつ、それぞれの客に配当を渡しているのだ。
はい!すっご~い!
なぜ、そんな事が出来るのか?
勿論指先は器用でなければならない。
では、計算は?
実は、これは
指先が計算しているのだ。
ヒントは先ほど述べた<20個づつ>にある。
20個のチップの山を片手で持つ。
その横に20個以上の山を置き、余分な分を削ると20個になる。
あるいは、20個を片手に持ち、下をテーブルマットに擦り
3個はずすと17個になる。それを二つ合わせると34個になる。
このやり方の様々な応用で、複雑な倍数計算を瞬時に
指がやってくれるのだ。
あまりのスピードに客は、必ず自分で計算をし直している。
ペンで紙に書いたりしている。
しかし、ほとんどと言っていい程、間違わない。
なんせ、手は嘘を付かないのだ。
言い換えれば、
魔法の芸を見せているのだ。
客は、払うばかりで、換金の出来ないギャンブル場に
指芸を見に来ているのだ。
まさか、その芸人が、入って一週間しか経っていない
時給300円のアルバイトだとは知らずにね。