<
ローハイド>というアメリカのテレビ番組があった。
西部劇だ。
クリントイーストウッドが出ていた。
西部の荒野を牛を追って生活しているカーボーイのお話だ。
白黒の30分番組だった。
言葉は、勿論アメリカであるからして、英語であろうが
当時のアメリカドラマの常として、
日本語吹き替えだ。
この吹き替えというのは、日本独特の文化で、
とてもレベルが高いらしい。
非常に上手いらしい。
当時、ローハイドを見ながら、隣のおっちゃんが
『この外人、日本語うめえなあ』
と感心していたぐらいだ。
そして、ローハイドは
標準日本語で吹き替えられていた。
そんなある週の事。
ローハイドのストーリーに、
南部の人間が登場した。
はっきりは覚えていないが、確か、南部から来た流れ者が
牛を売って欲しいってな話だった気がする。
その南部の男が、主人公であるカーボーイの首領、
ウエーバーさんに話かけるシーンだ。
ウエーバー「君は何しに来たんだね?」
南部 『牛バ売って欲しいっとですタイ!』
ウエーバー「今は売れないよ」
南部 『バッテン、買って帰らんバ、ワシの家族困るバイ!』
?????
テレビの前でひっくり返った。
アメリカの南部は九州弁だったのか!
ものすごい意訳。
アメリカの南方地域の人間を表現する為には、
どうしても、
九州弁に頼らざるを得なかったという訳だ。
テレビ局の製作者の自由な発想が面白い。
では、もっと南方、つまり、ハワイの男が登場していたら
沖縄弁で喋ったのだろうか?
ええ~?
では、北部の男なら、
東北弁だったのだろうか?
カナダ人あたりが登場すると、
『あ~牛さ追えば、いいんでないかい~』
なんて北海道弁が聞けたのだろうか?
ある意味、テレビ黎明期は自由な時代だったのかもしれない。