慌てていた。
味噌汁を慌てて飲んでいた。
ゴクンと飲み込む直前に、口の端からチョボっと
こぼれた。
とっさに下を向くと、
ズボンの膝に、味噌汁がポトンと落ちるところだった。
思わず
『
アッ!』
声をあげた。
すると、どうなる?
口中には、まだゴクンをしていない味噌汁本体が待機している。
その入口が『アッ!』の形に開いたのである。
下を向いて開いたのである。
『アッ!』の形は大きい。
いっせいに、薄茶色の汁が、膝めがけて落下していく。
目標は、最初に出来た
小さな染みだ。
まさにアッと云う間に、
その染みが、大きな地図になってしまった。
イソップの童話の、こんな話を思い出した。
犬が肉を咥えて、橋の所までやってきた。
川を覗き込むと下に、肉を咥えた仲間がこちらを見ている。
その肉が欲しいので、『ワン!』と吼えたら、
自分の肉が川に落ちたとさ・・
コレは、<あまり欲張るんじゃないよ>という教訓話だ。
イシマルップの場合、教訓はどうなるんだろう?
<慌てると、ろくな事がないよ・・>
<アッ!の使い方を勉強しなさい>
<吸い物はやめましょう>
それとも、
ただの・・アホだろうか・・