『おかわりどうぞ』
旅館に泊まり、ホーホケキョの録音の歌声を聴きながら
朝食に舌鼓を打っていると、
オカワリをすすめられる。
今朝、私が食べたいご飯の量を、
今、目の前にあるご飯茶碗で換算すると、
一杯と7分目である。
つまり、1,7杯。
『おかわりどうぞ』
この声にのせられ、
「7分目下さい」
なんて、茶碗を差し出そうもんなら、
きっちり、
10割つがれた茶碗が届けられる。
どこの旅館でも、どこの民宿でも10割つがれる。
よし! ここで、日本旅館、民宿に於ける、
オカワリの法則を考えてみよう。
「7分目下さい」 では、満杯のご飯がつがれる事がわかった。
最もポピュラーなのが、
「
半分下さい」
つがれた茶碗を見ると、9分目 入っている。
「
少しだけ下さい」
8分目 入っている。
「
ちょこっと下さい」
7、5分目 入っている。
「
ほんのちょこっと下さい」
7分目 入っている。
これが、現状である。
今や、戦後闇市の時代ではないのだ。
オカワリする事を
みっともないとは、誰も言いやしない。
だから、
オカワリする行為に遠慮なんかしていないのだ。
ところが、オカワリされる側、つまり旅館側は
『遠慮しないで食べて下さいね』
というスタンスを、ガンとして崩さない。
遠慮なんかしてませんよね。
むしろ、どの位の量をコントロールして食べようか?
どの位の量がダイエットにふさわしいか?
どの位が大名旅行として相応しいか?
と、考えているんだわな。
違う言い方をすれば、残すのが勿体ないから、
正確な量を伝えているだけなんだよね。
「どうぞ残して下さいな」
いえいえ、ご飯を残す事が出来ないのですよ。
そうか! 我ら宿泊する側も、表現が曖昧だったし、
真剣味が足らなかったのかもしれない。
よし!ここからは、旅館側との戦いだ。
『すみませ~ん』
「は~い、おかわりですか?」
『
すずめの涙ほど下さい』
(しかし、これでやっと茶碗5割である)
『
こさじ一杯ほど』
(4、8割になったかな)
『みつぶほど入れて下さい』
(ふむ、4、6割になったかな)
『
おもゆ程度に・・』
(4、5割になったかならないか)
『この空茶碗を!このまま持ってきて貰えますか!』
(ほんとにそのままか・・再び満杯か・・)
『ええいクソ!え~と!え~と・・・』
「申し訳ございませんが、そろそろランチタイムのお時間ですが・・」