魚をさばいている。
見事な包丁使いだ。
流れるような台所仕事は、まるでダンスをしている様だ。
誰も言ってくれないので、自画自賛している。
今まさに、魚を三枚におろし、
皿にのせ、
ラップをピリっとかけ、
クルリと振り向き、冷蔵庫にしまう、バタン!
クルリ!
アレっ?
今仕舞ったばかりの、三枚におろした魚が
皿にのり、ラップを掛けられて目の前にある。
どういうこと???
不思議なこともあるもんだ・・と冷蔵庫を開けると、
そこには、
ラップの箱がちょこんと置かれてあった。
ふ~ん人間とは、相当の能力を備えていながら、
あまり有効には使っていないらしい。
ごめん、自分個人の問題を人類の問題に
すり替えてしまった。
そうそう、猫のこんな姿を見たことがありませんか?
オケツ座りした猫が、顔の横に後ろ足をピーンと上に挙げ、
お股の掃除をペロペロしている。
そんな時、こちらから呼びかけるのだ。
すると、
足を挙げたまま、こちらを見る。
しばらく見ている。
そのうち、関心を失くすのだが、
足は挙げたままだ。
お股ペロペロを再開しない。
自分が何をしていたのか忘れたらしい。
忘れたのに、足は挙げたままだ。
自分が足を挙げているという現実に気付いていない。
相当非常識な格好をしているにも拘わらず、
すまし顔で、虚空を見つめている。
あれ程の運動能力を持つ、猫にしてコレである。
過少の運動能力の私では、
気付くはずもないではないか・・
魚とラップの違いなどに。