運転免許を持っている方。
あなたが教習所に通っていた時、どんな天候でした?
昼でしたか?晴れてましたか?
(本日は、これを読んだ後に、
2月24日の過去ログを参照すると面白い)
イシマルが通った日々は、
殆ど夜だった。
おまけに、
殆ど雨だった。
土砂降りの暴風雨の夜もあった。
だから、常にライトは点灯。
ワイパーは動きっぱなし。
運転の練習としては、かなり過酷な条件である。
ただし、危険回避練習を常にやっている様なもので、
運転技術は上がるだろう。
そんな中、確実に単位を取得していった。
目指すは、最小単位で卒業する事だ。
そうすれば、費用も日数もかからない。
ところがある日、
雪が降ったのである。
雪が降ろうがカミナリが鳴ろうが、教習所は休まない。
同乗した教官が、まず心得を繰り返す。
「いいかい、こういう雪の日に絶対やってはならない事。
それは、
急ブレーキ!」
『急ブレーキですね』
「タイヤがロックして、
スーとスケートみたいに滑っていくからね」
『急ブレーキですね』
その後も、さんさんと雪は降り続く中、
とろとろと所内を回走していた時だった。
ふと前方に雨合羽を頭からかぶった職員が
スコップ片手に道を横断してきた。
雪かきをしようとしているのか、
こちらの車に
気付いていない。
(あぶない!)
とっさに、ブレーキを踏もうとする。
しかし、良い子の生徒のイシマル君は、教官の
先の言葉を
頭の中でリフレインさせた。
「急ブレーキは駄目よ!」
なるほど、こういう時の格言なのね。
よし、ゆっくりとブレーキを踏んでいこうと
足に力を込め始めた・・途端!
ガアア~~~ン!
隣に座っている教官が、
思いっきりブレーキを蹴り付けたのである。
(教習所の車には、運転席と助手席の両方にブレーキがある)
え~うっそ!
と思うまもなく、車が滑りだした。
スーーーーーーー音も無く、雪の上を滑っていく。
10mほどスーと滑ったところで、
コツンと音を発てて止まった。
コツンとは、雨合羽の職員のスコップに
軽くぶつかった音だ。
驚いた職員は、一応転んだ。
世間的な言い方をすると、
ハネラレタのである。
ところが、ハネラレタくせに、すぐに飛び起きた。
飛び起き、助手席の教官に向って、ヨオとばかりに
手を振る。
教官も、ヨオと
手を振る。
そういうもんかと、私も
手を振る、ヨオ。
「今日は、この辺にしましょ」
教官の言葉に従い、駐車場に車をつける。
「え~今日の単位は、ナシですね」
『な!なんでですか?』
「人をハネましたからね」
『だ、だ、だって、あなたが・・』
「いったん車に乗ったら、責任はすべて運転手にあります」
『って、そおんなぁ~』
しかして、私は、一回だけ単位を落として、
免許を取得したのだった。