(う、う、動かない・・)
ホテルに泊まったとしましょ。
ベッドに横たわったとしましょ。
さあ、眠ろう~
ゴソゴソと布団の中に潜り込む。
その時だ。
(ん?なんか変だな?身体が拘束されてるな)
そうなのだ。
ホテルの中でも、ビジネスホテル系では、ベッドのシーツが
足元の所で
ガッチリ!ホールドされているのだ。
足元のベッドマットの間にシーツを挟みこんで
締め付けているのだ。
(さあ、困った)
これから眠ろうとしているのに、
思いの他、身体が不自由だ。
ここは何とか、締め付けの呪縛を溶かなくては・・
まず、最初の方法を試みる。
足先で、シーツを持ち上げようとする。
・・少しだけ持ち上がる。
次に、ヒザを使って右に左に、
空間を作ろうとする。
・・ややシーツが持ち上がる。
次に、身体を左右にひねって、シーツをベッドから
剥がそうとする。
しかし!
ホテルのベッドメーキング係りは
しっかりとした仕事をしている。
必要以上のしっかり仕事に力を注いでいる。
ちょっとやそっとでは、シーツは剥がれてくれない。
蓑虫(みのむし)になった気持ちになる。
よお~し、ならば最後の手段!
私は今、ベッドに横たわっている。
真上を向いている。
両手をポキポキ言わせ、その手で毛布の上からガツッと掴み、
思いっきり引っ張る!
引っ張る!
おお!先ほどから、何をやっても動かなかったシーツが
ジワリ、ジワリと動き出す。
ついに、足元から、外れようとしている。
ベッドの足元側が持ち上がっている。
あと少しだ!
よしここでガンバレ!
せ~の~で
思いっきり引っ張れえええええええ~!
ばくん!
外れた・・シーツが・・
それは喜ばしい事だ、しかし・・
外れた反動で、なんと!
私の
両コブシが
思いっきり、アゴにブツかったのだ。
ガツン!
さあ眠ろうと思っている人間にとっては、
衝撃の
アッパーカットである。
しばし、天井を見つめたまま、言葉が出ない。
わが馬鹿さ加減に、目尻の端から、涙がにじみ出ている。
たかが、
たかが、ホテルのベッドのシーツを剥がした行為で、
アゴに、最強のアッパーカットを喰らったのである。
誰にこの悔しさをブツケたらいいんだろう?
誰にこの情けなさをブツケたらいいんだろう?
あ~あ・・あ~あ・・・・
と嘆き悔やみ続けていると間もなく、
白々と夜が明けていくのであった。
<アッパーカットの夜は明けて・・>