シベリアは広い。
そのシベリアに2年前、記録映画の撮影で、ひょいと渡った。
新潟空港から、飛び立つ。
着陸したハバロフスク空港から、さらに飛び立つ。
着陸したイルクーツクから、列車に乗る。
延々一晩揺られる。
そんなに、移動しても、どこもかしこもシベリアだ。
シベリアがどれほど広いか、日本に帰ってきてから話そうとして、
表現方法を持たない事に気付いた。
え~だからして、
今日は、こんな表現をしてみよう。
あなたがお昼ご飯を、
ちょいと外に食べに行こうとしているとしましょう。
何でもいいとしたら、
一番近いお店は、どこですか?
そこまで
何分かかりますか?
えっお宅、ラーメン屋?
そんな方はほっといて、
さて、どうでしょう?
歩いてでも、車を使ってでも構いません。
15分以上かかった方は、
日本の中でも、随分自然豊かな場所にお住まいだね、
それはそれで羨ましい。
そこで、シベリアだ。
我ら撮影班は、お昼が食べたかった。
現地のコーディネーターに相談すると、
「なんで、弁当を持って来なかった?」 っと仰る。
「食べネエか、それとも走るか?」 っと言う。
『食べネエのは辛いだで、走ってくれ』 っとお願いする。
車が走る・・・・走る・・・・走る・・・
どこまででも走る。
お昼の時間はトオの昔に過ぎ去った。
『あのぉ、もう何でもええで、
キオスクみてえなモンはネエだか?』
「ネ」
走る・・・走る・・・
おやつの時間も過ぎていく。
そして、ついに、陽が紅葉の樹林帯の中に沈み始めた頃、
名もない、看板もないお店に辿り着いた。
私が思う、シベリアのレストランの、人口密度ならぬ、
お店密度は、
埼玉県に一軒である。