まず上の写真を見て頂こう。
コレは、シベリアにある、線路の遮断機である。
日本の竹の棒の様に、生易しいものではない。
地面から、重い鉄板がグイっと持ち上がり、
車を止めている。
「強行突破許さんぜ!」の意識が強い。
そのシベリアを、車で移動した。
ロシア人の運転手が付いている。
その運転技術がとても楽しい。
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ガソリンを節約する>
走っていない時は、いっさいエンジンをかけない。
瞬時でも停まれば、すぐにイグニッションキーを廻し、
エンジンを止める。
「え~と、暑いんですけんど・・」
服を脱げ、と言う。
「え~と、寒いんですけんど・・」
服を着ろ、と言う。
楽しいのは、丘陵地帯だ。
なだらかな山道が続く地形になると、運転手の技量が試される。
標高差50mくらいを、登ったり下ったりする道を走る。
いい塩梅に、シベリアの道は直線が多い。
登りは、致し方なくアクセルを踏んで登って行く。
ただし、登りきるまで、アクセルを吹かさない。
頂上の大分手前で、
エンジンを切るのだ!
すると、車は惰性で登っていく。
平地で60キロほどで走っていた車が、
徐々に遅くなり、頂上直下では、
歩くほどのスピードになる。
「ああ、停まっちゃうよぉ~」
こちらの心配をよそに、ギリギリの所で、
下りが始まるのだ。
殆ど、停まりかけたタイヤが再び回り始める。
当然の事だが、車内は静かである。
外を風が流れる音しか聞こえない。
やがて、スピードが出てゆく。
どんどん出てゆく。
エンジンで走っている時には感じないスピード感である。
もの凄く早く感じる。
おっ、下り切ったな・・と思いきや、すぐさま登りが始まる。
それでも、運転手くんはエンジンをかけない。
どこまで行けるか試しているようだ。
だんだん遅くなる。
頂上まで行けるだろうか?
ゲームになってきた。
ひょっとしたら、
無ガソリンで行けるかも!
同乗者全員が意気込む。
遅くなった。
やばいかも・・
車両が重いのかも・・
何か捨てるものは、ないだろうか?
思わず、カバンをさぐる。
ひとり跳び降りて、走ったらどうだろう?
皆が同じ思いで、それぞれを見やる。
「ああ~止まるぅ・・・
・・ああ~とまったぁ~」
しばしの沈黙、
とその刹那、グラリ、車体は動き出すのであった。
再び、下りの始まりだ。
運転手くんは、クルリと振り向き、親指を立てる。
その顔には、こう書いてあった。
(ボク、毎日ココ 通ッテルだよ~ん)