<カツオの血合い>(ちあい)
この血合いは、飲食店、特に飲み屋にとっては
永遠のテーマなのだ。
どういう事か?
今、あなたの目の前の皿に、
一枚のカツオの刺身が乗っているとしよう。
三角形だ。
富士山をどちらかに歪めた感の三角形だ。
一番長い辺が、皮に近い部分だろう。
脂がのって、白っぽくなっている。
そして、
一番短い辺が、問題の箇所 <
血合い>だ。
色が他よりも赤黒く、全体の10%を占めている。
その
10%が大問題なのだ。
店によっては、
その10%を
あらかじめ除去して売り出している。
理由は、その部分が
腐りやすいからだ。
不味さの根源となるからだ。
ところが、10%除去すると、どうなる?
当然売り上げが、10%少なくなる。
そこで店長は考える。
(10%減ってもいいから、
美味いモノを出して集客するか)
(さほどの
不味さに目をつぶって、利益を求めるか)
<血合い>は、店長に土壇場の苦悶を強要する。
そう、あれは、35年ほど前の事だ。
当時、板前さんは、
血合いを取り去るという究極の技に
心底努力を重ねていたようだ。
思い出すのは、
私が皿洗いのアルバイトをしていた高級料理店<ざくろ>
その総板長さんの言葉だ。
「血合いを、キレイに取り去れ!
ただし、ちょっとでも本体の身を削ったら、
それは、
貴様の家族の食い扶持を削ってるのと同じだぞ!」
この言葉を思い出すたびに、
魚を大切に食べたいと、身が引き締まる。
ふむ・・・
ところで、<ざくろ>では
キレイに
取り去った血合いの方はどうしたのだろうか?