「ヘリコプターが大はやりだね」
「ねえ、ヘリコプター食べたあ?」
「いやあ、豚はやっぱりヘリコプターだね」
言葉という奴は難しい。
耳で聞いただけでは、解らない。
上の会話もいったい何を言ってるのか、目を丸くしてしまう。
あなたは、ヘリコプターと聞いてしまったが、
実は、こう言っているのだ。
「ねえ、イベリコ豚食べたあ?」
<イベリコ豚>が大はやりである。
イタ飯系のレストランに入ると、壁に貼ってある黒板に、
必ずと云っていいほど、この名前が書いてある。
メニュウを受け取りながら、
『今日のお薦めは何ですか?』
の質問をすると、返ってくる言葉が
「ヘリコプターが御座いますが・・」
ウエイターはイベリコ豚と言っているのだが、
私には、ヘリコプターにしか聞こえない。
頭では解っているのだが、
耳は、
ヘリコプターと聞いたと、頑として譲らない。
その大はやりのイベリコ豚を、食べた事がなかった。
ヘリコプターに聞こえるから食べなかったのではなく、
単に、機会がなかった。
その機会を、昨日作った。
無理やり作った。
スーパーにヘリコプターが並んでいた。
(なんか、
わざと間違ってるみたいでしょ・・
わざとです)
骨付きのブロックで売っていた。
標高が5センチもある立派なヘリコプターだった。
お値段が高かった。
どっかの舞台から飛び降りた。
家に持って帰ったものの、
どうやって食べていいのか分からない。
まあ、焼けばいいだろう。
塩コショウをして、焼いた。オーブンで焼いた。
香りが凄まじかった。
脂が、ジャンジャンはじけた。
味は?
・・・・
う~んとね、おなかが空いていたから、美味かった。
う~んとね、まあ、豚はブタだね。
う~んと、肉は焼き方がすべてだね。
焼きはやはり、プロに任せなきゃね。
よし、今度レストランに行ったら、
思い切って頼んでみよう。
そこはやはり、是非こう頼んでみよう。
「ヘリコプター下さい」