「おうぅ、歯ごたえのネエ魚だなぁ、すっとこどっこい!」
江戸っ子の、魚の刺身を食べるテーマは、<歯ごたえ>だ。
歯ごたえに、命を懸けてる感もある。
歯ごたえさえあれば、一応許している感もある。
歯ごたえの無い魚を、許さない感がある。
さて、この魚の名前は何を読むのでしょう。
<鰆>
魚偏に春と書いて、<サワラ>
スーパーの魚コーナーに行くと、
サワラの西京漬け、サワラの味噌漬けを売っている。
関東では、
サワラは焼き物で食べるモノだと、
たかをくくっている。
ところが、どっこい、瀬戸内海では、刺身で食べる。
積極的に刺身で食べる。
この刺身が、独特の旨さを醸し出している。
そして何より、刺身の柔らかさだ。
<やわらかい>
サワラの刺身は柔らかい。
ほにゃほにゃしている。
「ざけんじゃねえヨ、コイツを刺身とは呼べネエな」
江戸っ子の大工の棟梁に、怒られそうな柔らかさだ。
さあ、ここで、江戸っ子の刺身の常識を忘れてみよう。
すると、あの、柔らかさは、旨い。
刺身的な
ケーキである。
上品な味わいの
刺身ケーキである。
やろうと思えば、歯で噛まなくても食べられる。
刺身を舌でこね回している内に、溶けてしまう。
こんなに柔らかい身体で、良くまあ、
荒海で生き延びて来たものだなあと感慨深い。
これほど柔らかい魚は滅多にいない。
滅多にいないのだが、
その滅多の一匹を今日、手に入れた。
<
ハガツオ>
歯ガツオとも称される、カツオの仲間。
柔らかい身。
この柔らかさで、サワラと是非、闘って貰いたい。
こんなに、柔らかく旨い刺身を食べるにつけ、
<サカナ柔らか選手権>を開催したくなってきた。
そうそう、小さな声で言うけども、
アイツも実は、選手権に参加出来る位、柔らかいんだよ~
<マグロ>
ハガツオ