イギリスを南から北に向かい、
スコットランドに足を踏み入れると、風景が一変する。
それまでの、穏やかな緑のジュウタンが無くなり、
荒々しい地形が現れる。
山アリ、谷あり、湖あり。
絵に描いたような、自然の造形美に驚く。
あれは、自然が
絵葉書を意識しているとしか思えない。
絵葉書用に、自らが、構図と色合いを演出したに違いない。
さらにスコットランドは、お天気の変化が凄まじく激しい。
雲ひとつ無い晴天だと思っていたら、
15分後に、雨が降っている。
一日に、20回も30回も雨が降る。
その合間は晴天だ。
スコールは南の島の特権だと思っていたら、
とんでもなかった。
そして、その度に、
虹が出る。
緯度の関係で、太陽が低い分、
大きな弧の見事な虹を見ることになる。
さて、問題です。
虹は、
何色(なんしょく)でしょう?
「そんなの、問題にもならないでしょ。
7色だし」
はい、あなた・・正解です。
日本人にとって、虹は
ナナイロ。7色だと決まっている。
小学生でも知っている。
ところがどっこい、祭りでわっしょい!
イギリスの方に同じ質問をすると、怪訝な顔をされる。
「なぜ、そんな質問をするんだ?」
え~知らないのぉ~
「虹の色なんか、分かるワケないじゃないか」
へ~そうなんだ。何色どころか、
なに色が有るかも知らないんだ。
学校で教えないんだ。
歌で、唄わないんだ。
それに、虹は珍しくも何ともないんだ。
実際、一日に5回も6回も、見事な虹に遭遇する。
その気になれば、20回、30回も夢ではない。
そして、その度に、カメラマンに向かって叫ぶ。
「あそこに、虹!」
カメラマンの杉下さんが、慌ててカメラを向ける。
そして、あたふたする。
『どこ?』
ほとんどの方は知らない事実だが、テレビカメラって、
覗いているモニターは白黒なのだ。
カラー映像を収録しながら、カメラマンが見ている映像は
白黒なのだ。
だから、虹が見えない。
<虹の見えないカメラマン>
なんか、どこかの映画のタイトルみたいだな。
「杉下さん、撮れました?」
『っと思うよ・・』
こんな会話が、
夕陽せまるスコットランドの大地にコダマしていた。