この猫、名前を<ハナ>と云う。
<花>ではなく、<鼻>らしい。
ここは南の島のウインドサーフィンゲレンデだ。
ハナ、
ノラなのか、飼われているのか、不明である。
なんとなく、そこにいて、食い物を貰い暮らしている。
完全なる家猫でないせいか、可愛らしさに少し欠ける。
ややフテブテシイ。
愛嬌で、マンマを頂こうという狙いがない。
隙さえあれば、人様のごはんを
かっさらおう、
という魂胆が見え見えである。
猫のくせに、ひどく食いしん坊である。
肥満してきている自分に気付いていない。
そして、ある日、
ハナの首に何かが、
ぶら下がっているのを発見した。
お手紙に文字が書かれてある。
<結婚式招待状>
このウインドサーフィンゲレンデのスタッフに、
ヨッピーと呼ばれている男がいる。
そのヨッピーが結婚する事になった。
こりゃメデタイってんで、招待状が、ハナにも届いたらしい。
さあ、ハナにとって一大事である。
食べ放題の会場に堂々と入場出来るのだ。
誰はばかる事なく、<かっさらい>が許されるのである。
むしろ、かっさらえば、かっさらう程、
喝采を浴びるかもしれない。
「もう食べたくニャイ」
と横を向いても、顔の前に、
ごちそうを突きつけられるかもしれない。
アルコールを舐めさせられるかもしれない。
という事は、当然帰りには、引き出物が渡されるな。
首に、大量のご馳走が括り付けられるだろうな。
(別途で、マタタビも、届けられるだろうな)
プンプンといい匂いが、首の所から登ってくるのだろうな。
腹いっぱいなのに、首にごちそう。
嬉しいかな?
迷惑かな?
しかし、こっちが、こんなに心配しているのに、
当人のハナは、まだそんな夢あふれる未来を、知りゃしニャイ。