(ん?コレでお終いかなぁ?)
リンスがどうやら、
最後の一滴になったらしい。
まあ振ってみれば、もう一日分くらいは出てくるかもしれない。
とりあえず、新しいヤツを出しとくか・・
・・と思いながら、決して出すことはない。
リンスが無くなった事など、バスルームを出た瞬間に忘れている。
さて、翌夕だ。
風呂に入って、シャンプーを済ませ、
リンスを持ち上げた刹那に思い出す。
しまった!リンスが無い。
待てよ、まだ出るかな?
リンスの口を下に向け、思いっきり振り、押してみる。
あらら・・意外と出てきたな
リンスの残が。
翌夕、判で押したような同じ作業をしている。
リンスを振っている。
あらら・・意外と出たな
リンスの残が。
実は、ここまではイントロに過ぎなかったのだ。
翌日も翌日も、リンスは途切れない。
少量ではあるが、頭髪に足りる分は供給してくれる。
なんだか嬉しい。
なんだか、
得した気分になる。
リンス如きで「得した気分」も大人気ナイとは思うのだが、
実際にそう感じてしまうのは、致し方ない。
リンスの
打ち出の小槌だ。
子供の頃に読んだ<ナントカ童話>に、
<北斗七星になるヒシャクの話>があった。
ひどい干ばつが続いていた時、ヒシャクで掬った水を
自分は飲まずにガマンして、みんなに分け与えた話だ。
すると、ヒシャクから、何杯も何杯も、水が溢れ続けたお話だ。
昨夜、バスルームで、
そのヒシャクのお話を、感慨深く思い出してしまった。
なんせ、目の前にあるリンスのボトルは、
廃棄の宣告を受けてから、
すでに、10
日生き延びているのだから・・・