子供の頃、まだ蒸気機関車が主流だった頃・・
僕らの遊び場は、デッキだった。
トンネルが近づくと、かん高い汽笛と共に大人達が、
窓を閉め始める。
僕らはデッキに一目散。
いさんで行ったそこは、揺れに揺れている。
大きく両足を踏ん張ったつもりなのに、まるでロデオだ。
足元をのぞく。
連結器の下を赤茶けた枕木がすっ飛んでいく。
ここは、所謂、半分外だ。
一際大きく機関車が吠えた。
トンネルの合図だ!
それっ!
思いっきり息を吸い込む。
やには、轟音と共に、トンネルに吸い込まれる。
ギュっと目を閉じた僕らの周りを、
高熱のススが舞い、渦を巻いている。
ゴー!地球の底に落ちていく。
ボー!ススの粉が顔に当たって痛い。
ああ、もう駄目だ、息が・・息が・・
その瞬間、ドカーンとトンネルから飛び出した。
頭のテッペンからつま先まで
ススだらけの僕らが、白い歯をむき出して笑っている。
涙を流して笑っている。
「よおし、もういっちょやろう。次のトンネルは長いぞ!」