これは、桑の実である。
桑の葉っぱは、蚕(かいこ)が食べる。
その桑の木をほおっておくと、木は大きくなる。
すると、春になると、実が付くのである。
春に実が成る、珍しい樹木である。
そういう意味では、さくらんぼに似ている。
他には、グミの樹も、春に実を付ける。
そして、それらに共通している味がある。
<甘酸っぱい>
秋の果物は、酸味より、甘みに力を入れている様に思われる。
対して、春に実を付ける果物は総じて、甘酸っぱい。
代表的なものは、イチゴだろう。
イチゴは地べたに出来るので、野生のイチゴを称して、
<野イチゴ> と我々は呼ぶ。
対して、木に成る、酸っぱい果物を称して、
<木イチゴ>と呼んだ。
桑の実は、私の子供の頃は、野に成るご馳走だった。
木の高さも高からず低からず、丁度良かった。
高すぎると、枝が細いので、
実が成っている枝の先っちょまで
辿り着けない。
低すぎると、子供たち皆の餌食になってしまい、
あっという間に、
無くなる。
適度に木に登れる子供に、やや有利だったのである。
プチプチと手で摘み取り、口に運ぶ。
赤い実は、かなり酸味が強い。
酸っぱさ好きには、こちらがお奨め。
潰しても、余り色は付かない。
黒い実は、熟して甘みが強い。
何でも、熟し好きな方にはこちらがお奨め。
潰すと、赤黒い色素が出てくる。
そう、黒い実を潰すと、赤黒い汁が噴出し、手が、
真っ赤になる。
食べると、舌が赤くなり、口の周りも、赤い汁で染められる。
慌てて食べていると、着ている服に赤い汁が飛び散り、
悲惨な状態になる。
食べ終わった私が、振り返って笑ったりすると、
食肉殺人鬼が、そこにいるかの様だった。
さて、桑の実を食べたいと思った方。簡単です。
以前、蚕を飼っていた地域に行きましょう。
昔植えていた桑の木の、何本かがそのまま大きくなっている。
それに、実がついているのです。
最近は、誰も食べないので、成りっぱなしです。
え~お子さん以外は、一応持ち主に声を掛けましょうネ。