最近の私のはまりは、魚河岸である。
早朝、都内でロケが終わった折など、
そのまま、築地魚河岸に向かう。
築地は、場内と場外に別れており、
場外は、観光客が行きやすく。
場内はやや、敷居が高い。
入っていけない事はないのだが、暗黙のルールを守らないと、
魚河岸の方たちに、迷惑を掛ける事になる。
たらたらしていると、大八車にぶつけられ、
ターレー(通称バタバタ)に轢かれるはめになる。
何たって、新鮮な魚を扱ってる総本山だ。
「っるせえな、魚、腐っちまうぜ!」
っと、ジョーカーを切られてしまっては、返す言葉がない。
さて、狙いは寿司屋だ。
午前10時にもなると、数ある寿司屋の前に、
行列が出来始める。
これが面白い。
隣の店はガラガラなのに、なぜか、その店は行列が出来ている。
そんな店が何軒かある。
恐らく、マスコミ、ミニコミでの影響だろう。
まあ、並ぶのもいいでしょう。
しかし、並ぶのが嫌いな私は、
これ幸いと、空いている店に飛び込む。
出されたお絞りで、手を拭う間もなく、
「アジね」
「イワシね」
「サバね」
「カツオね」
「サンマね」
ひと通り、
光モノ系を総なめすると、返す刀で、
脂こってり系を連発する。
「ブリね」
「サーモンね」
「トロね」
「トロね」
「トロね」
「炙りトロね」
「カマトロね」
「ごちそうさま~」
っと、毎回こういきたいのだが・・
実は、私にとって、魚河岸には
入り口に障害があるのだ。
入り口近くにある食べ物屋さんの中に、
どんぶりモノを食べさせる店がある。
<
モツどんぶり>
おばちゃんとお姉さんがやっている小さな店だ。
歩道に面しており、客が5人も座ればいっぱいだ。
カウンターに、大きな鍋がグツグツ音を発てている。
こげ茶色の見るからに、危なそうな食べ物だ。
モツが大量に甘味噌醤油味で、煮付けられている。
うなぎのタレと同じで、
継ぎ足し継ぎ足し、煮込んでいるらしい。
この前を通ると、足が、
香りのクサリに繋がれてしまう。
(いいか、今日はわざわざ、
寿司を食いに来たんだぞ)
自分に強く言い聞かす。
(昨日から楽しみにしていたのは、
寿司だぞ)
手を握り締める。
(今日は、少しは散財してもいいんだぞ。
なのに、この丼は650円じゃないか)
まだ、足は動かない。
(待てよ、寿司は築地でなくても食えるな、
ところが、この丼はここじゃなきゃ食えないじゃん)
屁理屈をこね出した。
(どちらを食べなかった方が後悔するかな?)
胸が痛み出した。
(ほら、ちょうどイスが空いたじゃないか)
ちょうど空いたのか、空く様に待っていたのか・・
(早く座らないと、他の人が座っちゃうよ)
「・・・一杯ください・・」
ああ、寿司は遠くにありて思うもの・・