ゴクゴクゴクっ
夜中に喉が渇いて、ペットボトルの水を飲む。
500CCのボトルだ。
布団の上で、とても器用な飲み方をする。
フタを外したあと、首だけを横にヒネリ、
水が、その口からコボレ落ちる直前に、我が口に放り込む。
一滴の水もこぼさない。見事だ。
500CCならまだいい。
2リットルのボトルの場合は、さらに高度なテクニックを要する。
それでも、何事もなかったの様に、水飲みの芸を披露する。
ゴボンゴボンっ
身体は決して起こさない。
起こすと、目が覚めてしまう危険性があるからだ。
我ながら、ほれぼれしてしまう芸である。
さて、車の運転中に、水が飲みたくなる事がある。
脇に、ペットボトルを置いてある。
500CCだ。
これは、丁度いい。うまい具合にグビグビやれる。
ところが、昨日はなぜか、
2リットルのボトルだった。
それも、残り僅かであった。
残り僅かの2リットルボトルを、ガッシと掴む。
信号が赤になったのを見届け、フタを開け、
左手で、口元に持ってくる。
さあ、傾け始める。
残り僅かという事は、
かなり傾けなければならない。
水平以上に傾けなければ、水は出てこない。
ゴンっ!
あれ、天井にぶつかってしまった。
車内の頭の、前部、及び上部は、
思いのほか狭い。
2リットルのボトルを前方に差し出せない。
そこで、やや
左に傾ける。
それでも、天井にぶつかっている。
仕方ない。
我が頭を、右に
屈み込ませる。
あれっ、ハンドルが邪魔だな。
もっと頭を右に傾け、ぐいっと
身体をねじる。
都はるみが歌っているポーズに似ている。
コポンコポンっ
さらに
屈み込む。
砲丸投げの最初のポーズ・・砲丸を首の横に位置し、
身体を小さく折り曲げている姿勢に似ている。
そのまま、顔だけを、上に向けている。
コポンコポンっ
ん?隣で、信号待ちをしていた車の運転手の女性が
こちらを見ている。
目が合った途端、
プっ!
吹き出した。
おいおい、プっちゃなんね、プっちゃ!
私が必死で水を飲み干そうとしているのに、プっはないだろ!
ああたに、この芸当がマネ出来るとでも云うのかい?
<乗用車運転席、2リットルボトル残り僅か、いっき飲み>
これが、いかに難しい芸当か、一度チャレンジしてみなさい。
それが出来てからなら、許します。
プっとやっても・・