~昨日の続き~
カツオという魚は、走りながら、ランチを頂くのだ。
立ち止まる事を殆どしない。
以前、マラソンの谷口選手が給水所で、靴が脱げてしまい
走り戻った事があったが、
あの程度の事が、ちょくちょく起こっているだけだ。
集団としては、常に前進をしている。
カツオ釣りは、船団が出来る。
ここに、私の乗っている船が海に浮かんでいるとしよう。
その下をカツオが通過しているとしよう。
我々の竿は絞り込まれ、次々にカツオが船上に捕り込まれる。
すると、どこからともなく、他船が近づいてきた。
4隻ほどが、我々の周りに群がる。
その中の(
東に位置する)一隻の釣り人の竿が曲がりだした。
つまり、水中を走るカツオは、
東に向かっている事が判明したのである。
当然、他の船は、さらに東に廻り込む。
ふと気付くと、船はいつのまにか20隻を越えている。
さらに、その10分後には、30隻のカツオ船が
渦巻いていた。
この群がり方はなんだ!
アフリカのサバンナで、ヌーの群れを追うハイエナに似ている。
(たとえが悪いな)
いや、アレに近いかもしれない。
アメリカ映画で、
スワットチーム(警察突撃隊)が突入するシーンだ。
『ハット、ハット、ハット!』
と掛け声を発しながら、次々に突入してゆく。
先頭の者が、前方に銃を向けている間に、次の者が前進する。
前進した者が、又前方に銃を向ける。
こうやって、進んで行くのである。
後ろの者が前の者を追い越す動きだ。
(サッカー、オシム前監督もそう言っていたな)
カツオ船団は、まるでスワットチームの如き動きをする。
オシム監督に褒められる
ポリバレントな動きである。
直径200メートルほどの海上に、
30隻の船が蠢いているのである。
ところが、その船団の動きが止まる瞬間が来る。
カツオの群れが、
進路を変えたのだ。
一瞬、船は立ち尽くす。
そして、花火が開くかの様に、範囲を拡げてゆく。
30隻の魚探(ソナー)が海中を照らし出す。
そして、一隻の船が、カツオの群れを発見して釣り始める。
新たなスワットチームの開始だ。
我々の船の下をカツオが過ぎる時間は、
数秒だ。
その数秒間に、自分のエサが、
カツオの目の前にぶら下がっていなければならない。
開始と同時に3キロのカツオを釣り上げたイシマル。
いったいこの先どうなるのだろう?
と嬉しい杞憂をしてしまった私。
しかし、二本目を釣り上げたのは、5時間後であった。