「ああ、
あの餃子が食べたい!」
思い立ったら、すぐに走り出す。
高速道路を北へ・・北へ・・
あの餃子とは、昨年の夏、福島県福島市で、ばったり見つけた店、
<満腹> (
まんぷく)
知っていても、なかなか見つけられない店。
知らなければ、見つけても、入る気がしないような、
見た目に欠けた店。
外見に一切、化粧努力をしない店。
東京を抜け出し、3時間。
見た目に欠けたフリをしている店は、あった。
ガラガラガタピシ
扉をこじ開けると、皮の焦げる香ばしい臭いに、クラクラする。
「こんばんは」
『いらっしゃいませ~』
「餃子、ひと皿」
『はぁ~い』
明るい女将さんの声が弾む。
この店の餃子の特徴は、皮かもしれない。
ぎっしり敷き詰めた餃子が、なぜ、
くっ付かないのか解らない。
その皮たちが皆、膨らんでいる。
プックラ膨らんでいる。
中に香りを閉じ込めた空気が充満している。
ガブリとやった瞬間に、その空気が口中爆裂をおこす。
中身の具は以外と少ない。
その少なさを空気が補充している。
この餃子は、
空気を食っている・・とも云える。
それも、とびきり美味い空気だ。
だからだろうか、一人前、30個もあるのに、
ペロリとたいらげてしまう。
ペロリをやったばかりなのに、
ペロリに、もう一回チャレンジしたいと思っている自分がいる。
福島まで、3時間かかった。
昔、森永キャラメルは、一粒で、100m走れると主張していた。
満腹の餃子は、30個で、3時間走れる。