《本州で最も寒い処です》
目の前の看板に書いてある。
その看板を、オートキャンプ場の入り口で見ている。
どうしよう?
ココで、今夜泊まっていいのか?
ココとは、岩手県の北部、岩洞湖(がんどうこ)である。
《日本で》とは書かずに《本州で》と書いてある所がにくい。
よし、その謙虚さにあやかろうってんで、
我が車、
ペンションハイエースを、オートキャンプ場の
指定された一画に停める。
オートキャンプ場なるものに初めて泊まった。
区画整理され、芝生を敷き詰めた立派な土地である。
およそ25坪、駐車場一台OK、電気あり、上下水道なし。
お隣との仕切りなし。
ただし、両お隣は、現在使われていない。
お値段、3000円。
湖が目の前だ。
白樺の林に囲まれ、酸素濃度が濃い。
なにより、涼しい。
都会は35度だと騒いでいるのに、このヒンヤリ感はなんだ!
とりもなおさず、炭に火を点ける。
途中の魚屋で買い求めた、おおぶりな秋刀魚を網にのせる。
辺りが暗くなってきた。
寒い・・かもしんない。
長袖シャツに着替える。
薄暮の中で、じっくり秋刀魚を焼いていた。
明かりを灯すのがもったいなく、白樺の白さを頼りに
秋刀魚を焼いていた。
焦げているのに気づかなかった。
焼きあがった秋刀魚に懐中電灯を当ててみると、
頭から尻尾まで、完璧な真っ黒であった。
炭で秋刀魚を焼いたのではなく、
秋刀魚を炭にした・・が正しい言い方になった。
うう、岩洞湖はやはり寒い。
そんなだから、さぞや星空が美しいだろうと、期待したのだが、
その期待を当人が裏切り、酔っ払って眠ってしまい、
う~ん、よくワカンナ~イ。
3000円の借景