ダム好きである。
旅をしていて、ダムが地図上に現れると、迷わず向かう。
ダムのある場所は、わかり易い。
グネグネ曲がった川を辿ればよい。
上流から向かえば、川の水がだんだん増えてゆくので、
いとも簡単に見つかる。
下流から向かえば、川の両側の崖が、
どんどん急峻になっていくのが解る。
その先に、突然、聳え立つ壁が現れるのだ。
あの<聳え立ち>に出会った瞬間には、
フルオーケストラの大音響が聞こえてくるようだ。
アーチ型のダムは、見た目が美しい。
黒部ダムがその典型例だが、アーチの上の道を歩くと、
あまりの高さに、腰がムズムズする。
私が好きなダムは、
石積みダムだ。
石をひたすら、大量に積んでいくのである。
大きさ様々な石や岩を、ブルドーザーでただただ積んでいく。
子供に、砂浜でダムを作らせると、こうなるだろう・・
というダムだ。
コンクリーで固めるワケではないので、
垂直の崖が出来ない。
なだらかな傾斜の壁が作られてゆく。
その壁は、普段登れるようになっている事が多い。
立ち入り禁止ではない。
もの好きは、その壁を登る。
下流側から、ヨイショヨイショと登っていく。
ところが、これが実は大変なのだ。
ダムは規模がでかい。
小さいダムでも、やはりでかい。
周りに対象物がないので、大きさが解らないだけで、
見た目より、遥かにでかい。
つまり、壁の高さは高い。
傾斜も相当のものである。
気軽に登ろうとしたものの、少し後悔を始めている。
今更、登りを止めるわけにもいかず、登り続ける。
もの好きは、ここで、立ち止まる。
ダム全体の丁度真ん中に立っている。
傾斜地の真ん中に立っている。
上空からのカメラをグ~っと引いていくと、
もの好きは、大きなベニヤ板に張り付いた
アリに似ている。
そのアリが、石を一個一個、積み上げたのだから、
アリの力と知恵は大したものだ、と関心しながら、
さらに上を目指したのであった。