魚市場好きである。
旅をしていて、魚市場が地図上に現れると、迷わず向かう。
魚市場のある場所は、わかり易い。
港に向かえばいいのだから、こんなに見つかり易い場所もない。
魚市場に向かうには、朝だ。
大きな町の港のセリは
早い。
夜明けから始まる。
それに対して、田舎の漁港の朝市は
遅い。
9~10時はざらである。
午後からなんて所もある。
いくらなんでもそれじゃ、魚腐っちまうぜ!・・と心配になる。
小さな漁港のセリが面白い。
魚の数も種類も絶対的に少ない。
その辺の、素人の釣り人が釣ってきたとしか思えない箱が
置いてあったりする。
小魚が、何種類もその箱の中に入っている。
それをセリ人は、大真面目で値段を吊り上げていく。
都会の港では、
<小>とされる大きさの魚が、
この漁港では、その日の
<最大>であったりする。
セリに参加するおいちゃんおばちゃん達に、活気はない。
毎日のリクレーションの雰囲気がいっぱいだ。
ベチャベチャ喋りながら、ゆる~いテンポで進行していく。
この地方の大手スーパーなのだろうか・・
同じ名前の買い人が、たくさんセリ落としていく。
又、<Aコープ>かよ・・
Aコープの張り紙が、箱に入れられた魚にベタベタ張られている。
そういう時は、夕方、Aコープに出向く。
鮮魚コーナーに足を速める。
おお~並んでいる!並んでいる!
朝方、
セリ落とされたあの魚が、
一匹丸ごと・・
こっちは、
身がサクとなって・・
そっちは、見事な
刺身となって・・
出自から、知っている刺身を買うのは、楽しい。
売る側の気持ちを知っているのだ。
(おまえが売られていく所は、しっかり見届けたからな・・)
娘を女衒に売られた
てておやの気持ちになる。
(ほんとかな)
さて、
大量の魚が挙がる港で、
じっとその様子を見ている事がある。
イワシが何10万匹も挙がる銚子港で、立ち尽くしていると、
「おい、兄ちゃん持ってきな」
市場のおいちゃんが、落ちているイワシを数匹拾ってくれる。
ビニール袋に、有り難く押し頂く。
その時、気付くのだ。
じっと見ているのは、私だけではなかった。
屋根の上に停まっている、カモメがいた。
私は、カモメと戦っていた勘定になる。
そして、実力は、
カモメより勝っていたと言って差し支えないだろう。
(卑怯者)と蔑むような、そのカモメ君の目はやめて貰いたい。
カモメ君に言っておく。
「私は、正々堂々とエサを手に入れたぞ。君らのように、
掠め取る様なマネはしなかったぞ。どうだ、まいったか!」