私は悔しい!
「イナダ釣りに行かな~い?」
ナカヒラ君からメールが届く。
料金をを払って魚を釣る遊魚船ではなく、
友人の船に乗せて貰うのだと云う。
その友人の船に乗せて貰って、我々は東京湾に乗り出した。
狙いはナカヒラ君の云う、
イナダだ。
ブリの青年魚だ。
港を出港して、たった5分で現場に着いた。
よお~し、釣るぞおおぉ~っと意気込んでいる私の横で、
ナカヒラ君が早くも、
船酔いをしている。
オエエェェ~とか言っている。
人を釣りに誘っておきながら、船に異常に弱い。
しょうがない・・
ナカヒラ君の釣り道具をすべてセッティングしてあげて、
我々は、釣りをスタートさせた。
させたものの、全く魚の気配がない。
エサさえ取られぬ。
戦中4人の竿は静かなままだ。
そんな中、
静かでないのは、ナカヒラ君。
オエエェェ~
船べりに、猫背の身体を折り曲げ、吐き続けている。
余りにも辛そうだ。
胃袋までも、吐き出しそうな嗚咽である。
船酔いは苦しい。
車酔いの非ではない。
そこで、私は、
ナカヒラ君の背中をサスッってあげたのだ。
自分の釣りを放棄し、友人の健康を最優先したのだ。
子供の背中をサスル様に、愛情たっぷりのサスリであった。
その時!
「引いてるよ!」の声に、
私は自分のタックル(釣り道具)に駆けつける。
しかし、遅かりし、釣り糸が切られてしまった。
油断であった。
ナカヒラ君の背中をサスッている間に、
大きな魚が掛っていたらしい。
千歳一隅のチャンスを逃してしまった。
っと、次の瞬間だ!
「引いてる引いてる!」
引いてる・・と言われたナカヒラ君は、船べりにシガミ付き、
ゲロンチョ状態だ。
だのに、突然、飛び起きるではないか!
先までのゲロンチョはどこへやら・・
自分の竿を手に取り、リールを巻き始めた。
結果を先に言おう。
船中、唯一のイナダを、ナカヒラ君が釣りあげたのだ。
釣り上げたあげく、大声でノタマウのだ。
『俺ってサッ、
釣りの天才だね!』
船中シーンと静まり返る。
そりゃそうだろう、さっきまで、ゲロンチョの人間が、
言う言葉だろうか?
さっきまで、背中をサスッて貰っていた人間が
言う言葉だろうか?
その夜、更に、追い討ちの言葉が続く。
私が造ったイナダの刺身を前に、ナカヒラ君。
『誰にも
釣られなかった筈のイナダを、食ってみるぅ?』
私同様にムカッとした方は参照⇒(2007;10月10日)