[さあ、腹減った、朝食を食べに行こう!」
ホテルや旅館に泊まり、足取り軽く朝食会場に向かう。
大概、バイキング形式である。
様々なオカズを盗み取り、テーブルに運んでくる。
そこで、問題が起こる。
問題は味噌汁だ。
わかめの味噌汁だ。
<本日の味噌汁 わかめ>
と親切に明記してある処もある。
そうかそうか、わかめの味噌汁はいいな。
っと、ざんぶり注いで、我がテーブルに持ち帰る。
袖をめくり、
「いただぁ~きあんす」
まず、チャブチャブと味噌汁を掻き回す。
ん・・?
わかめ・・・?
確かに、わかめが入っているには違いないが・・
余りにも絶対量が少ない。
2㎝四角の切れ端が、3~4切れ。
重さにしても、計りの針が振れない程・・
これを、わかめの味噌汁と呼ぶのだろうか?
呼んでいいのだろうか?
あの大きなズンドウの中に、
どの程度のわかめを、板さんは投入したのだろうか?
ひょっとすると、私が会場に来る時間が遅れた為、
早いもの勝ちで、
わかめを殆ど、掬い取られてしまったのだろうか?
それとも、
ド奴か、
強欲野郎が、わかめだけ救い取ったのだろうか?
この問題を解決するには、この方法しかない事に気づいた。
<自分の身は、自分で守る>
《
マイわかめ》を持参するのである。
スーパーに売っている
カットわかめを、ポケットに忍ばせ、
朝食会場に持ち込むのである。
バイキング会場に、
持ち込み禁止の文字は無い。
無いのだから、堂々と持ち込めばいいのだが、
どこか後ろめたい心情が残り、こそっとポケットから出す。
その黒緑色した小さな塊を、ドバドバと味噌汁の中に放り込む。
その袋を、またまたすぐにポケットに仕舞う。
持ち込み禁止の文字が無いのだから、
そのままテーブル上に置いておけばいいのだが、
なぜか、すぐに、ポケットに隠し入れる。
これは、マナーであろうと信じている。
しばし待つ・・
すると、ホレ出来ました!
わかめの味噌汁正統派だ。
箸を突っ込む。
ん・・?
ズシリと重い塊が出てきた。
いくら何でも入れ過ぎたか?
まるで、
わかめの煮付けだ。
どんどん水分を吸ってゆくので、汁が殆ど無くなる。
仕方なく、配膳場所に赴き、汁だけ注ぎ足す。
その時、見られてしまったのだ。
後ろに並んでいる男性に、私の
お椀の中身を・・
男性の目が、お椀と私の顔を行き来する。
その眼が語っていた。
『おめえか、ほとんど掬い取った強欲野郎は!』
与論島 百合が浜