餃子を作る。
<餃子造り>
それは、誰からも教わった事もなければ、
レシピ本を読んだ事もないので、全くの創作だ。
年に一回だけ作る。
100個以上の数を作る。
それを食べさせられる人達がいる。
年に一回、食べさせられるのである。
私の餃子研究の犠牲になっている心温かい友人達である。
まずは、皮の制作に取り掛かる。
小麦粉の薄力粉と中力粉を用意する。
その分量配分は、毎年変える。
今年は、
薄力粉2:
中力粉3 にしてみた。
重量800g。
それに、塩水を320g。
「なんだい?その
320gという具体的な数字は?」
と疑問をお持ちの方に説明すると、
小麦粉に少しづつ水を加えていき、
(ま、こんなもんでしょう)
と、私が感じたアバウトながらも、微細な数値であるのだ。
ボウルの中で、粉を捏ね始める。
この作業は、ことのほか大変である。
今回は、犠牲者の一人の、為藤(ためとう)さんに手伝い願った。
すぐに、捏ね始めようとする
タメトウさんに、
『タオルを持ってきて下さい』とお願いすると、
怪訝な顔をされた。
『タオルを首に巻いて下さい』と言うと、
素直に巻きながらも、目をパチクリさせていた。
だが、その真意は、数十分後に理解される事となる。
小麦粉を捏ねだすと、グルテンがどうとかなって、
モチモチの弾力を発揮する。
その硬さに打ち勝ち、必至で、捏ねなければならない。
捏ね始めの頃には、
活力を失った、
お爺ちゃんの肌状態の表面を、
最終的には、
赤ん坊の肌ごとく、
すべすべ柔んわりに仕上げなくてはならない。
しかして、捏ね続けること数十分・・
タメトウさんの額や首筋に大粒の汗が浮かび、
真下に位置する、ボウルに降りかかりそうである。
『タオル、タオル!』
慌てて汗を拭う。
そう! タオルはタメトウさんの汗を調味料にしない為の、
必需品だったのだ。
私の
先見が明していたのだ。
この餃子の皮造りは、人を育てる力がある。
初めて小麦粉を捏ねたタメトウさんである。
捏ね始めの不器用さとは、打って変わり、
後半の力の入れ具合、捏ねクリ回し方は、
まるで別人の様であった。
タメトウ流とでも云うべき、
捏ねクリ方さえ、編み出していた。
さあ、皮は出来た。
これを冷蔵庫で一晩寝かせて・・
っと、この続きは、また明日・・