<矢筈山(やはずやま)>
伊豆半島の伊東市に標高816mの峰がある。
矢筈とは、弓矢の弓に弦を掛ける部分である。
二股に分かれており、弦を差し込む仕組みだ。
つまり、矢筈山というのは、てっぺんが二つに分かれている。
大分の由布山に似ている。
イシマル探検隊(4名)の今回の標的は、この矢筈山だ。
この山の登山口は、峠にある。
その名前が、不気味だ。
鹿路庭(ろくろば)峠。
ビヨ~ンと伸びる首を想像してしまう。
これまで、多くの山に登ってきたが、この山には驚いた。
峠を出発し、峠に戻ってくるまで、
誰ひとり遭遇しなかったのである。
丸一日、我々以外の登山者がいなかった。
そんな山であるからして、道は一応整備されてはいるものの、
落ち枝、倒木が、わんさかなのだ。
しかしながら、実に魅力あふれる山である。
苔の大群を見ることが出来る。
岩にも樹木にも苔がびっしり張り付いている。
葉っぱの落ちた冬景色なのに、緑の絨毯、緑の草原を歩いている。
頂上近くなると、トン単位の岩が積み重なった場所を登攀する。
それも又、緑の世界だ。
途中、その昔、噴火口だったと思われる広大な窪地にがあった。
そこに、植林された杉並木が美しい。
植林された杉は、普通、斜面に生えている。
ところが、この盆地では、平らに広がっているのだ。
この杉林を彷徨っていると、
そこだけ数本、残された自然木があった。
その枝の一本が折れて垂れ下がり、偶然隣りの木に引っ掛かり、
ブランコが拵えられていた。
木の妖精のブランコである。
天空から、数条の光が差し込み、幻想的な空間を演出している。
まさに前衛の舞台を見るかのようだ。
ブランコに座り、一瞬の静けさ・・
人のあまり来ない山・・
なのに素晴らしい矢筈山。
森の妖精のブランコ