《サッカーを見ている》
《ホッチキスを止めている》
この二つの行為を同時にしていた。
サッカーを見ながら、ホッチキスで紙を止めていたのだ。
事件はここで起こる。
まず、ホッチキスを止めている私を分析してみよう。
ウインドサーフィンのレース<マスターズ>を主宰する私は、
この時、三枚の紙を束ねる作業をしていた。
三枚の紙をトントンと揃え、紙の
右上隅にカチリと
ホッチキスを打つのである。
カチャッ
次は、サッカーを観戦している私を分析してみよう。
イギリスのプレミアリーグの戦いが、テレビ画面にある。
マンチェスターユナイディドのロナウドが映っている。
ロナウドと云えば、
昨年、サッカー界の世界NO、1に輝いた選手である。
おお!
今しも、そのロナウドが、ゴール前にドリブルで走り込んだ!
っと、なんと、
ヒールキックで後ろにボールを送った。
見事なヒールキックである。
<ヒールキック>が解らない方の為に、説明する。
あなたの頭ほどの大きさのサッカーボールが足元にあるとする。
あなたは、左足で立ち、右足で、そのボールを後方に蹴るのだ。
いわゆる、見えない後ろに向かって、コツンと踵で蹴るのだ。
ロナウドの
ヒールキックは、素晴らしかった。
感激のあまり、私の口から悲鳴がこぼれた。
ホオ~~!
ふんで、事件が起こった。
ヒールキックの瞬間、
テレビ観戦中の私のホッチキスが、カチリと音を立てた。
観戦中にも、三枚の紙を止めていたのだ。
ん・・?
右上(
ウエ)に止めるべきホッチキスが、なぜか・・・
右下の隅に打たれている!
右下(
シタ)に打っちゃった・・
ど・・どういう事?
分析;
私はどうも、ロナウドが
後方に送ったボールの動きを
頭の中で反芻していたらしい。
<
後方>におくる。
<右上>から
後方である<右下>におくる。
するとそのまま、私の頭は、命令を下す。
《後ろに向かって
何かしろ!》
すると、私の指が動く。
《紙の後ろ(右下)にホッチキスする》
かくして、ホッチキスが紙の右下に嵌められた。
横で見ていたマスターズ事務員が情けない一言。
「なんで、そうなるかなあ?」