尾瀬の黎明期の頃から続いている山小屋。 《長蔵小屋》 「大自然の恩恵の下に集まりて、 この大自然の美を享受せよ」 初代の平野長蔵氏の言葉である。 今、4代目の「太郎」さんが小屋を継いでいる。 尾瀬がダムの底に沈まなかったのも、車が乗り入れられずに、 自然が残されたのも、この小屋主の方をはじめとした、 尾瀬を守ろうとした大勢の方たちのおかげである。 何気なく尾瀬に行き、日本の自然そのものを楽しめるのは、 先代の心のたまものだと、思いを新たにしたい。 その長蔵小屋の別館に、ピアノがあった。 それも、グランドピアノ! これで、私が見つけた山小屋のピアノは7つになった。 恥ずかしながら、触らせてもらった。 いつもの曲を弾かせてもらった。 クロワッサンサンドを頬張った腹が鍵盤の近くで揺れていた。 遠くで、メボソムシクイの鳴き声が響いている。 10月の頭頃になれば、紅葉がすすみ、 見事なまでの秋の彩りになるだろう。 9月の初旬は端境期なので、尾瀬は比較的すいている。 ねらいどころかもしれない。 歩いている木道のすぐ脇に、水芭蕉の残骸があった。 周りに大きな踏み跡がある。 これは、クマが水芭蕉の実を食いあさった残骸だと知る。 恐らく人がいない時間帯に、現れてバクバク食ったのだろう。 あたりに、草が倒れ、歩き回った跡もある。 ただ尾瀬では、主役が人間となっている。 大勢の人間の前に、クマは出てこない。 人間を怖がっているからだ。 そうそう、長蔵小屋の前に、望遠鏡が三脚に据えられて、 どこかに向けて立っている。 覗いてみると、燧ケ岳(2356m)の頂上に、 ピントが合っている。 頂上で、登山者が手を振れば、見える。
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by ishimaru_ken
| 2024-09-15 05:54
| その他
「おお~まさとぉ~」 大きな声で呼び合っているのは、尾瀬の山小屋の前だ。 相手は、尾瀬のボッカ(歩荷)の萩原聖人(まさと)くん。 どこかの役者(雀士かもしれない人)と同じ名前。 6年前、北アルプスの蝶が岳のヒュッテの談話室に、 ポツンと座っていた彼に、声をかけたのが出会い。 理由は、目が異様にキラキラしていたから。 聞いてみると、尾瀬のボッカだというではないか。 その日は、テレビ局の撮影の荷物持ちとして、雇われたらしい。 丸一日、雪で閉じ込められ、滞在を余儀なくされたので、 ふたりで、ボッカ話に花が咲いた。 山小屋への荷物運びが、ドローンのおかげかセイか、 将来少なくなるだろうとの予想から、 未来のボッカ業について、話し合っていた。 その中で、私は、浅草の人力車のような残り方を、 未来像として述べてみた。 人力車が観光地の風物詩となるように、ボッカの姿も、 尾瀬の風物詩となるのではないか。 たとえ、荷物を運ぶ必要が少なくなろうとも、 「ボッカは残る」と口から泡をとばした。 その時、25才まさと君は、ニコニコと聞いていたのだが、 あれから6年後、彼は面白い企画を立ちあげていた。 《ボッカが人間を運ぶ》 ボッカでは背負子(しょいこ)という木でできたモノで、 荷物を運んでいる。 それを利用し、ヒトを乗っけようと言うのだ。 仮に体重が70キロの人を乗せれば、背負子と合わせて、 75キロほどになる。 これを地面に置いた状態から、担ぎ上げるのである。 その上で、尾瀬沼の畔を最低10分以上散策する。 考えただけで、気が遠くなりそうな企画。 「もう、始めているんですよ、乗りませんか?」 人が乗れるように造り足した背負子を差し出してくる。 こりゃ、面白そうだ。 「そうだ」とまでは考えたが、ほんとに担げるのか? 荷物のように、ガッチリと固まったモノではなく、 グニャグニャした人間を乗せ、もし、ぐらついて、 落っことしでもしたら、えらいことになる。 乗り方も考えられていた。 まず、私が背負子に進行方向に向けてまたがる。 つぎに、彼が、背負子を立てていき、 肩ひもを肩に通してゆく。 やがて沈み込んだ彼。 両足にチカラを込め、グッ! すうぅぅぅ~~からだが浮いた! 浮いてしまえば、もう、完全に安定している。 歩き出す。 かなりガッシリした歩き方。 階段を登るのも、まったく問題ない。 そして、下りだ。 山登りをする人でも、重い荷物を担いでの、下りは、 難しい。 かなり神経をつかう。 ところが、まさと君の下りは、上に乗っている人間が、 ほとんど怖さを感じない非常にスムーズな下りである。 そうか、考えてみれば、尾瀬のボッカは、 重い荷物を担いだ出発地点から、ずっと下りでやってくる。 帰りは軽い荷物を担いで登って帰る。 つまり下りにめっぽう強いのだ。 ゆらゆら揺れている様は、乗馬にそっくりだ。 これなら、客は馬の鞍に跨らせれば良いではないか。 その提案をすると、 「もうそれは考えてあります」と即答。 さすが、手は先に打ってある。 そして、担いで歩いている最中、まるで散歩中に、 普通の会話をするかのように、彼は喋り続けたのである。 そうやって喋れなければ、担いでいる意味がないと言う。 呼吸もさることならがら、 それだけの余裕がなければならないと言う。 10分ほどで乗馬のようなボッカ乗を楽しみ、おろしてもらった。 拍車喝采! 乗車賃、いくらにするのだろうか? 私的には、3000円でも安いと思う。 快適さもさることながら、人間の所業とは思えない強力! しかも、ボッカさんは、身体が大きくない、そのギャップ。 御嶽山に、ラスト強力と呼ばれる《倉本豊》さんがおられる。 麓から、山頂までヒトを同様に担いで登る方だ。 倉本さんが言うには、もう依頼して来られる人がいないらしい。 御嶽信仰の信者さんも、年齢が深くなり、 もはや担がれるのさえ、苦痛になりかけているそうな。 だから、そろそろ引退を・・・とも考えるものの、 後任者はいないと、なげいておられた。 そうか、場所は違えど、尾瀬で人を担ぐ担い手が、 復活したのである。 「何キロまでは担げるの?」 「120キロ担いだことはあります」 担ぐとは、「担いで長い距離運んだ」という意味である。 いいぞ、まさと君!
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by ishimaru_ken
| 2024-09-14 05:07
| 謙の発見!
突然、尾瀬の話しに飛びたい。 そう、スイスから帰ってきたと思ったら、 大きな荷物の荷開きもままならないまま、 尾瀬に旅立ったのである。 尾瀬には、群馬側や新潟側からのアクセスがあるが、 福島側も、好きだ。 この日の旅は、東京の浅草からの出発。 それも、0泊二日の旅である。 どういうことか? 東武鉄道に、夜23:45発の夜行列車が浅草駅から出ている。 《尾瀬夜行23:45》 朝の3時に福島県の「会津高原尾瀬口駅」に着く。 しかし、お客は、そのまま5時まで列車内で眠っていられる。 5時には、尾瀬散策の起点、《沼山峠行き》のバスが出る。 峠には、6:50に着く。 つまり、浅草を夜の12時ころ、出発し、ビールでも飲んで、 眠ってしまい、朝、5時にバスに乗り換えるだけで、 登山口に、「はい到着です」となる。 時間を有効に使いたい人には、便利な旅だ。 仮に、金曜の仕事が終わってから、この列車に乗り、 尾瀬に歩き出し、土曜日、どこかの山小屋に泊まり、 翌日曜に、帰ってくるというスケジュールを組める。 列車内の泊まりは、イスである点だけが、 眠れるか眠れないかの微妙さがあるが、 私は、爆睡してしまった。 沼山峠から、小一時間の歩きで、尾瀬沼の畔にたどりつく。 尾瀬は、いつの季節に訪ねても、美しい。 広々とした草原につづく木道。 途中に、ベンチのある場所で、遠くの森に向かって、 「ヤッホー!」 とやったら、コダマが返ってきた。 コダマとは、岩に向かってやると、戻ってくるものだ、 と思っていたのだが、森でもおこった。 森の樹々の幹に声が反射するのだろうか? あの場所を、《コダマのベンチ》と名づけてもいいだろう。 尾瀬日帰り 考えてもみなかった旅ができる。 本来は、泊まった方が良いのだが、 私はそのあと、すぐに大阪に向かわなくてはならない。 時間が無い中での、尾瀬夜行! 同じように時間に追われている方には、 こんな選択もあるのです。 帰りは、同じ路線を鈍行に乗り継ぎながら、 (会津の日本酒をもちこみ) 浅草に舞い戻ったのである。
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by ishimaru_ken
| 2024-09-13 05:59
| その他
スイス、ツェルマットでも変わりなかった。 目が覚めると、ホテルの朝食会場に向かう。 だだっ広いが、人は少ない。 どうやら、日本と同じバイキング形式。 まず、皿をとって、見渡すのだが・・・ 数歩歩けば、食材ダッシュは終わってしまう。 数種類の薄く切られたハムとチーズ。 卵はない、肉もない、魚もない。 朝食とはこういうものかもしれない。 文句はないので、集めてゆく。 トースターに、小さめのパンを入れる。 その間に、ヨーグルトコーナーに目をやる。 プレーンに、イチゴ味に、(わからない系)のモノを、 ごっちゃり混ぜ合わせで、ボウル皿に注ぐ。 カレー用の大きさのスプーンで食べれば、 20回くらい口に運べるだろう量。 チンッと言わずに、トーストがコンガリ焼けた。 ブルーベリージャムのパックを掴んで、 ナイフで、一つ目のコンガリパンに塗る。 その上に、ハム1枚とチーズ1枚を乗せる。 パクリっ 朝食好きとしては、まあまあのお味である。 ただし、サラダが無いのがツラい。 野菜はさほど好きでないのだが、 食べられないとなると、渇望感が湧き上がってくる。 係りの方が、ホットコーヒーとホットミルクをポットで、 テーブルまで運んでくれた。 これは嬉しい。 望めば、自分でお湯に紅茶ティーバッグを入れて、 飲むこともできる。 さて、二日目の同じ朝食には、 パンはそのままに、ハムとチーズが倍化する。 つまり、ひとつのパンの上に、ハム2枚、チーズ2枚。 そして、次の日、さらにエスカレートする。 ハム4枚、チーズ4枚。 横から見ると、ミルフィーユみたい。 次の日、さらに、ハム8枚、チーズ8枚。 横から眺めると、ラザニアそっくり! この状態の責任は、サラダが無いことに尽きる。 腹ペコ人間の腹に、サラダという、 膨らし物質を取り込めないからである。 っと、そのラザニアを口に運ぼうとした時、 テーブルふたつ離れた所に座っている初老のオジサンが、 両手の指をクルクル回す。 柔道の《指導》で腕をグルグル回す動きを、 指でしている。 どうやら、「パンを丸めて食べろ」と言っているらしい。 肩をすくめて、「それは無理だ」とジェスチャーすると、 今度は、縦に折り曲げる仕草をする。 「ホットドッグのようにして食べろ」と言っている。 「折曲がらない」とパンマイムすると、今度は、 片手にパンをのっける形で、上からバチンと叩いた。 「つぶして食え」と言っている。 目をまん丸くしていると、 ニヤリと笑うではないか。 オジサンは、私をからかっていたのである。 もし、私がバチンとやっていたら、 大笑いされたことだろう。 どこにもイタズラ好きはいるものだ。 #
by ishimaru_ken
| 2024-09-12 05:19
| その他
マッターホルンへの挑戦で、スイスに渡り、 2週間の旅から帰ってきた。 今回のチャレンジにあたって、スイスに行く前までに、 8キロの減量をして出かけた。 高山に素早く登る為に、身体からスイカ2つ分、 重みを抜いたのである。 それは、功を制した形で、うまく働いた。 スイスにいる間は、デンプンもたくさん摂った。 パスタやジャガイモなど、ガバガバ食べた。 肉に乳製品もムシャムシャ食った。 酒はほどほどにしたが、一応飲んだ。 さて、帰国して、どれほど体重が増えているのか? 自宅の体重計に乗ってみた。 すると・・・ 2キロ減っている! 出発前より、さらに痩せてしまっている。 たしかに連日よく動いた。 4000m級の山、2座。 3000m級、2座。 2000m級、3座。 登ったり歩いたり、クライミングしたり、 常に動きっぱなしであった。 それにしても、昨年の今頃から比べると、 10キロ体重が落ちている。 遊び仲間で、最近の私の動向を知らない友人が、 「どうしたの?病気?」 つまらぬ心配をしてくれる。 「いや、マッターホルンにね・・・」 説明をしたのだが、信じてもらえない。 「それより、何か食った方がいいよ」 と、ヤクルト1000を差し入れてくれた。
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by ishimaru_ken
| 2024-09-11 05:26
| スポーツ
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