人生の先輩たちの声がふりかかってくる。 「いやあぁ~あたしゃ元気元気で生きてきたんだけんど、 70才の声を聞いた途端、急に疲れ始めてなぁ~」 「いつから、どっと疲れるようになったかと言うとやネ、 あれは70才超えた時からだナ」 「70才に壁があるんと分かったんだヨ、やっぱネ」 次から次に、証言が襲いかかってくる。 69才の私に、大波のようにふりかけてくる。 70年以上の齢を重ねた翁たちが、 白髪を櫛で梳きあげながら、吐き捨てる。 「70を越えたら分かるヨ」 ツルツルの頭をなでながら、下唇をつきだす。 「70前にやっとけば良かったナ」 右横の髪を左まで強引に持っていきながらおっしゃる。 「ふん、まだ70超えてねえのかヨ、んじゃ分からんナ」 なにがなんでも、70にラインを引いている。 大みそかが69であり、正月が70だと諭されている。 つまり私は大みそかにいる為に、 翁たちのありがたい教えが耳に入って来ない。 その教えによれば、もうすぐ正月のお屠蘇を頂いたすぐ後から、 どっと人生の終焉の疲れに襲われるそうである。 何をやるにも、疲れるのだそうだ。 どうあがこうが、これは宿命だと明言された。 あげく―― 「いまは、分からんのヨ、いまはナ」 70にならなければ分からないと、人差し指を振られて、 念には念を押されている。 こうまで脅されると、ホントかもしれないと腕組みしてしまう。 つまり、私はいま断崖のギリギリのところで、 踏みとどまっている登山者だ。 あと一歩、向こうの道に足を出せば、 ドッと人生の山登りの疲れが襲い掛かってくるのだ。 歩くことすらままならなくなるのだそうだ。 食べられたものが、食べられなくなるのだそうだ。 お酒なんて、チョビッでお終いだそうだ。 「あんナ、噛むと歯が痛いんだよ」 ふむ、それは実感できている。 「寝たらすぐ起きてしまうんだヨ」 え~とね、昨日、10時間眠ってしまった。 「足がツルんでナ」 たしかにツル時はあるが、 漢方薬《芍薬甘草湯》しゃくやくかんぞうとうで、なんとかしている。 「あんたも、同じ言葉を来年から喋るようになるんだヨ」 なるのかな? 今の所、そんな気がしないんだが・・・ 「なるなる、皆んななる」 そうかなぁ~ならなかった時は、どうしたらいいのだろう? #
by ishimaru_ken
| 2023-06-06 05:26
| その他
![]() 《書く》という文章をつむぐ行為は時間がかかる。 書く人たちは、いつも「締め切り」という言葉に、翻弄されている。 子供が宿題に悩ましい悲鳴をあげるのと似ていなくもない。 私も、この3年ほど、いつも締め切りの原稿を抱えている。 月間のモノもあれば、不定期に依頼されるモノもある。 殆どのモノは、原稿用紙4枚から8枚ほど。 文字数で言えば、1600~3000文字ほど。 殆どの依頼は、お願いされてから締め切りまで、 3週間~ひと月ほどの猶予期間がある。 これが、難儀らしい。 猶予期間があると、当然、気分が猶予する。 2週間経っても、まだ2週間ある。 その猶予が、自分をひっ迫させるとは考えない。 さて、問題は私である。 私の場合、依頼されると、その場で書き始める。 すぐに仕上げてしまう。 ヘタすると、依頼された当日に返事として出そうとする。 実際、次の日に出してしまったこともあった。 依頼のあった300文字のエッセイを10本分、即配した。 すると、依頼した側が慌てた。 まだ、オファーがオッケーされるかどうかの、 交渉の段階だったようで、 内容を正確に伝えるヒマすらなかったらしい。 要求してきたエッセイの内容が違っていたのである。 「実は、食べ物系でお願いします」 丁寧に改めて依頼がきた。 ほいな! お願いされるやいなや、前の10本の原稿は捨てて、 すぐにもう10本、即、書く。 次の日、再び、300文字10本分、即配した。 先方の驚かんことか! 要は、セッカチなのである。 締め切りが嫌いなので、そのはるか前に、済ませたい。 締め切りなどという言葉に脅されたくないという心理が、 早く書かせている。 それにしても、早い。 駄文だから早く書けるとも言える。 ある意味、作家でないので、無責任なのかもしれない。 こう言うと、叱られそうである。 一応本を出版しているのだから、責任はあるじゃないか! そう言われれば、身が縮こまる。 50才過ぎるまで、つまり人生の半分以上、 名前と住所以外、ほとんど文字を書いてこなかったので、 《文字を書く》という行為が面白いのである。 本が好きで、活字はたくさん見てきた。 その活字が目の前で生まれてゆく様は、 活版印刷を眼前でおこなっている気持ちになる。 本来は縦書きにしたいのだが、ここではそれを許して貰えない。 ゆえに、私のもの書きの歴史は、 縦書きより横書きの方が、圧倒的に多い。 人間の眼球は、縦よりも横の方が素早く動く、と言われる。 早や書きの原因はそのあたりにあるだろうか? (んなわけない) ![]() 大分県 両子山(ふたごさん)の百体観音 #
by ishimaru_ken
| 2023-06-05 05:31
| 仕事
瓶が8本並んでいる。 塩や酢、昆布、唐辛子など。 《やきまし》などという分からないものまで置いてある。 注文した品に、好きにかけて下さいとのふれこみだが、 こんなに調味料系が並んでいるテーブルも見たことがない。 その割には、ほかの店によくある、胡椒やラー油、ソースがない。 ケチャップもマヨネーズもない。 ドレッシングもない。 そしてここが肝心なのだが、醤油がない。 でも爪楊枝はある。 「おねがいしま~す」 お品書きの中から、《もずくそば》を注文した。 しばらくして、湯気のあがる、もずくそばが出てきた。 まず、汁を飲む。 麺をすする。 そばと言うものの、いわゆる蕎麦ではない。 もずくを練りこんだ沖縄そばである。 う~~む、旨い! 顔をあげ、先ほどの瓶たちに目をやる。 いくつかかけてみよう。 酢と唐辛子をかけてみる。 味が進化した。 よく分からない《やきまし》をかけてみる。 ふたたび進化する。 その後、あれもこれも、試してみる。 なるほど、テーブルの上で客が料理に参加するシステムだ。 そこでハタと気づく。 このテーブルにないモノは入れる必要はない。 ケチャップもソースもマヨネーズも、 はたまた醤油も、しょっぱくなるだけだ。 えっ、刺身を注文したら? その時は、醤油を持ってきてくれます。 #
by ishimaru_ken
| 2023-06-04 05:15
| 謙の発見!
CS放送で、日々流されている番組である。 世界中で数十年前から起きた飛行機事故のひとつひとつを、 映像で再現したもの。 事実の検証を、事故当時のパイロットや乗客などが証言し、 俳優たちがリアルに再現している。 この番組は、事故の検証の過程を見せてくれている。 番組を見ていると、 「こんなにたくさんの飛行機事故があるんだ・・・」 一年に何度も飛行機に乗っている身としては、 怖気づいてしまう。 羽田空港に行くと、入り口近くに本屋がある。 平積みにたくさん並んでいるのは、航空機関連の本。 その中には、《墜落》に関するものもある。 ということは、コレを買い求め、そのまま飛行機に乗る方がおられる。 座席のシートベルトをカチャリとやったら、 墜落の本を読むのである。 この方の克己心やいかに! これは、新幹線のキオスクで、列車モノである小説、 《十津川警部シリーズ》西村京太郎著を買い求めるのと、 似ているようで、かなり違う。 飛行機はドキュメントであり、列車では小説だ。 それに、戸津川警部シリーズでは、脱線や転覆はない。 殺人があるではないか――と怒られそうだが、 あくまでフィクションに過ぎない。 特急列車のリクライニング座席に座りながら、 十津川警部の推理に身をよせていると、 まさか、後ろの席から刃物で襲いかかれるとは思わない。 ところが、飛行機の座席にうずくまっている最中に、 本の中では、翼に付いた雪の結晶の問題を学んでいる。 となると、つい窓の外の揺れ動く翼が気になり、見てしまう。 あるいは、エンジンの異音に敏感になる。 ヘッドホンで音楽など聴いている場合じゃない。 離陸前に、いつもよりかなり待たされた時間は、 何だったのか? 雲につっこみドスンと揺れるや、「ついにきたか!」 不安が本の解説で倍加してゆく。 墜落には、必ず理由があるという摂理を、長いフライトの間、 コンコンと読まされる。 「読まされる」と、文法上の使役方をつかった。 最初は、おのれにうち克つ為に読み進めていたものの、 いつのまにか、誰かに読まされている感覚におちいる。 仮に、この飛行機が落ちたとした場合、 この本を読んでいたからといって、何か墜落を回避できるとか、 気を失ったパイロットに代わって操縦するとか、 んなこと、出来る訳もなく、ただ自らを不安に落とし込めようと、 内部爆弾をふくらませているにすぎない。 おそらくこれらの本を空港で買い求めるヒトは、 たとえそういう場合でも、「知る」という知識欲に飢えているのだ、
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by ishimaru_ken
| 2023-06-03 05:37
| その他
スーパーで買い求めたイチゴをスプーンでつぶして、 ミルクをかける。 さて、昨日のイチゴは、しばし時間が経ったモノだった。 買ってから冷蔵庫に入れっぱなしにしていたモノ。 一番上に並んでいるイチゴに異変はなかったが、 下の方をひっくり返してみると、明らかに変色している。 薄茶色がうかび、崩れている。 「捨てる」? 「食べる」? ふたつの選択枝が浮かび、ふと、 「今、山の中にいるとしたら」と想定してみる。 山の中で、ビタミンは貴重だ。 剥いて食べたミカンの皮すら捨てないで、食べることもある。 もし、いま山の中にいるとしたら、このイチゴ捨てるだろうか? ――たぶん食べる。 「山中で食べて何も問題がないとすると、 家で食べても同じ結果になるだろう」 この無理やりな論理を通そうとする。 しかし、今の論理をひっくり返せば、 「山中で食べて問題が生じれば、 家で食べても問題が生じるだろう」 となるハズ。 昔から、腐りかけた食べ物をよく食べていた。 肉類や魚というタンパク質系は、腐るとひどい事態を招くので、 食べないようにしていたが、デンプンや野菜系は、 ニオイをかいで、判断していた。 果物などは、一度口に入れて、 毒見をするという習慣もあった。 よく考えれば、口に入れた時点で、毒を含んでいる訳で、 試しの意味をなしていない。 「この崖から落ちたら死ぬかもしれないので、 試しにちょっとだけ飛び降りてみる」 という、意味のない試しに似ている。 さて、腐りかけのイチゴミルクはどうなったか? 腐りかけとは熟しの最たるものだから、美味いという人もいる。 しかし、それは程度問題である。 アフリカのライオン王国の近隣に棲みこんでいる、 ハイエナ家族の気持ちが湧き上がってくる。 ハイエナは、骨まで消化できる胃袋を持っているらしい。 そのハイエナにして、腐肉は食えるのか? やや味の魅力が削がれたイチゴを口に含みながら、 アフリカの動物を思い起こしているなど、 するべきことではない。。 自虐的と言われても仕方ない。 でも私は単に、もったいないから食べているだけなのに、 人から心配される。 たしかにそろそろ、実験的な試し食いは、 もうやめた方がいいかもしれない。 この試し食いは、年に数回おこなわれ、 イチかバチかは、数年に一回試されている。 イチとバチのどちらが悲惨なのかは知らないのだが、 もうやめようと決めたので、最後はこのイチゴで締めくくろう! #
by ishimaru_ken
| 2023-06-02 05:20
| その他
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