<ビギナーズラック>
しばしば、使われる言葉だが、特に釣りに於いては頻繁に起こる。
先日も、船釣りが初めてという友人を、
船に乗せて東京湾に浮かべた。
竹中「あのデカイのは何?」
イシマル『タンカーだよ』
竹中「あの黒いのは?」
イシマル『潜水艦かなあ』
竹中「あの灰色のは?」
イシマル『イージス艦じゃないの』
竹中「ひえ~~」
いちいち感動している初心者であった。
この日は、お日柄も悪く、
同乗のタイ釣りベテラン達に、音沙汰が無かった。
そんな時に、威力を発する慣用句が、
<ビギナーズラック>
今夜の鯛の刺身を是が日でも釣って貰わなくてはならぬ。
ベテランの技術では、最早いかんともしがたい。
ここはひとつ、竹中くん!
君しかいないんだよ・・ラックを使って!
うわあああ~~~!
我らの思いが通じたのか、
竹中くんの竿が海中に突き刺さる。
「重いです・・重いです・・」
素直な感想を漏らす。
「なんか、コレってぇ・・凄いです」
半分パニクっている。
「あっ、軽くなりました!あっ、重くなりました!」
大騒ぎして、タモに収まったのは、3キロ弱の大鯛であった。
腹が白子でパンパンの、オスだった。
その夜、私が捌いて、見事な鯛の刺身を皆で頂いたのだが・・
この刺身がとんでもなく旨かった。
恐らく私が
これまで食べた鯛の刺身のベスト1かもしれない。
筆舌に尽くしがたいと云う表現がある。
まさに今の私の筆力では、この旨みを伝えられない。
一口食べた直後、立ち上がって後ろにのけ反り、
壁際に張り付いた私であった。
私以外のみんなは、ハシが止まらず、
ただただ黙々と、刺身を平らげていた。
皆の眼が喋っていた。
(なんなんだ、この旨みは・・!)
ビギナー竹中くん、ありがとう。
でも、もう君は使っちまったよ、ラック・・