
「大西洋横断レースやんない?」
ヤスタニさんの大西洋横断に、
思いっきり目が覚めてしまった私。
ウインドサーファーの会う人毎に、誘いをかけた。
かけながら、大会本部に問い合わせを続けた。
本部が言う事には、今回は
国ごとにチームを作り戦うのだと言う。
つまり、世界大会。
スペインから、ブラジルまで、行くと言う。
直線で
8000キロあると云う。
よお~し、気合が入る。
送って来られた英語の文書を辞書片手に解読する。
やっぱ、無理なので、バイリンちゃんにお願いする。
1チーム最低8人選手を集めようと言ってくる。
なんたって過酷な海面と風だ。
一人が、一日にウインド出来る時間を見積もると、
1~2時間である。
8人の中から、体調の良い選手を選ぶことになる。
4~5人がいいとこだろうか。
選手は、毎日選抜されて、一か月半の間、戦い続ける事になる。
さあ、この体力と気力、そして、出場するとなると、
仕事は休まなくてはならない。
おまけに、出場費が掛かる。
何よりも、命の保証が全くない。
<海の藻屑>という言葉がピッタリである。
そんなレースをやりませんか?
と、私が、いくら叫んだって、誰ものってきやしない。
ケンがホロロと砕けてゆく。
そんな時、日本人を超越したスピリットの持ち主が現れた。
香村(
こうむら)君(現在プロウインドサーファー)、
新田(
にった)君(元自衛隊員)。
死んでもやりたい・・と言う。
死んでもやらなければ・・と言う。
生きる為にやりたい・・と言う。
究極の2人が現れた!
私を入れて3人かぁ・・・
3人で一か月半、8000キロを走る・・・無理とは云わないが、
出場させて貰えないだろうな。
大会本部に問い合わせた。
帰って来た文章から、書いた人物が、
両手の平を上に向けて肩を竦めた様子が見て取れた。
かくして、3人の夢は消えた。
香村と新田とイシマルの地球規模の夢が、消えたのだ。
で、大会そのものはどうなったかって?
実は、スペインを出発して間もなく、
台風に見舞われ、救助艇が救助される羽目に陥り、
中止となったのだ。
しかし、この大西洋横断チャレンジは、
次の機会をじっと待っている。
イシマル募集は、まだ続いている、
8人いないかなあ~?
バカな奴!
おっと、間違った、あと
5人いないかなあ、
大バカな奴!