<ツクツクホウシ ど真ん中にいる>
《我輩は、セミ捕り名人である》
こう言い切っている私は、
嘘いつわりのない
セミ捕り名人なのだ。
セミの天敵と言ってもいい。
小学生の頃に、その名人となるべく技術が磨かれた。
真夏の昼間、イシマル少年が、蝉捕り網をかつぎ、
小学校のグランドをグルリと回ってくると、
セミの鳴き声は止み、
静かになったと言われた。
虫捕りカゴの中には、数十匹のセミで溢れていた。
やがて、高学年になってくると、
蝉捕りの網を使わなくなった。
<素手>
そう、素手で、捕まえるのだ。
これには、高度の技術を要する。
蝉捕り網には、長い棒がついているが、
素手の場合は、セミがいる場所まで登らなければならない。
登る時に、木を揺らしたり、振動を与えてはならない。
あくまで、静かに・・・
<だるまさんがころんだ>の木登りバージョンである。
カメレオンの如く、ジワ~っと近づく。
極意は・・
気配を消すことである。
そうして、最後の瞬間を見極め、
ダッ!と手を伸ばす。
このワザを習得するにつれ、セミの種類別の敏感さが判明した。
《セミ、敏感さランキング》
6位; クマゼミ
5位; あぶらゼミ
4位; チイチイゼミ
3位; ミンミンゼミ
2位; ツクツクボウシ
1位; ひぐらし
そう云えば、昨日、歩いていると、
前から、黒いアゲハチョウが飛んできた。
被っていた帽子をクルリと回すと、
簡単に採取できた。
そう、私は、
チョウチョの天敵でもあるのだ。