駅の構内を歩いていると、
醤油ダシ系のいい匂いが漂ってくることがある。
ホームで営業している
立ち食い蕎麦だ。
冬の早朝に、湯気を立てているそんな店を見つけたら、
思わず足が、かってに向かってしまう。
あのダシの匂いは、さほど強烈だ。
交通機関の構内で、そんな誘惑を振りまくなんて、
ズルイとさえ思う。
ところが、もっとズルイ店を見つけたのだ。
九州は、小倉駅。
その構内を歩いていると、やはりいい匂いが漂ってきた。
(ん・・?こ、この匂いは!)
<トンコツラーメン屋>?
ひょえ~!
九州育ちの人間にとって、トンコツラーメンの匂いは、
鼻孔を通り越し、胃袋に直撃を喰らったも同然なのだ。
たとえお腹がいっぱいの人でも、この匂いを嗅げば、
つい、一口だけ・・とベルトを緩めるとさえ言われている。
減量に苦しむボクサーは、トンコツラーメン屋の500m以内に、
決して近づかないとも言われている。
その誘惑あまたのトンコツ屋が、小倉駅では、ホームにあるのだ。
あまい匂いを撒き散らしているのだ。
通勤通学の人達に、これでもかこれでもかと垂れ流しにしている。
開いた列車のドアから車内に、注ぎ込んでいる。
次の駅、いや、もっと先の駅まで、送り届けようとしている。
我慢出来なくなったおいちゃんが、
次の駅でUターンしてくる事を期待している。
私は、
こっちのホームにいるのに、時間もないのに、
階段を登って、
あっちのホームに行こうと考えている。
あっちに行っちゃったら、
もう後戻り出来ないことは分かっているのだが、
心は、すでに、注文まで済ませてしまっている。
(麺、固めでネ)
ハシまで割ってしまっている。
(煮卵、トッピングで)
あ~なんで、こっちのホームからの列車なんだよ!
(替え玉、ください)